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2025年12月、コロンビア政府は「経済非常事態(Estado de Emergencia
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2025年秋に終幕した大阪・関西万博(結局私は行けず・・・)。 コロンビアは「展示の場」を
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コロンビアに来て、もう4度目の大統領選挙です。 毎回この時期が近づくと、農業が突然「発見」
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コロンビアの農業に、静かですが確かな資金の流れの変化が起きています。 環境配慮型の生産者ほ
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南米コロンビアの切り花産業はこれまで、カーネーション(洋菊に次ぐ代表的切り花品目)を中心に
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コロンビアの農業界では、GM(遺伝子組み換え)作物をめぐる議論が「静かな戦争」のように深刻
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写真はインディカ米。私も毎日、カリ地場企業Blanquitaの玄米をかみしめております。
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写真はメデジン地方のグアタペ。まるでヨーロッパにいるような景色・・・。 2026年に予定さ
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2025年、コロンビアの農業分野で外資系企業による生産・加工体制の強化が進んでいます。その
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コロンビアと米国の関係が、政治・安全保障だけでなく経済の現場にも大きな影響を及ぼしています
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コロンビアの農業に、新しい風が吹いています。アメリカの大手保険グループ Liberty M
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コロンビア政府がいま注目しているのは、コーヒーでもカカオでもありません。新たな農業戦略のキ
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コロンビアの田舎町ナリーニョで、農家たちが小さなトウモロコシ畑を守ろうと立ち上がっています
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今年の一時帰国の際に、「日本向けにカカオを輸出したい」と思いに火がつきました。それも、イバ
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経済非常事態宣言が映し出す、コロンビア財政の臨界点

2025年12月、コロンビア政府は「経済非常事態(Estado de Emergencia Económica)」を宣言しました。これは、国家の経済秩序や財政運営に重大な障害が生じた場合にのみ発動できる憲法上の例外措置です。これにより、大統領は一定期間、議会を経ずに税制や経済措置を政令として制定できる権限を持ちました。

この判断の背景には、明確な統計的悪化が挙げられます。2024年の中央政府財政赤字はGDP比約5.6%。これは、政府が中期財政枠組みで目標としてきた水準(概ね3%台)を大きく上回るものです。さらに、中央政府債務残高はGDP比約59%に拡大し、財政健全性の目安とされてきた55%前後を明確に超えています。

歳出面を見ると、圧力は構造的といえます。2020年から2024年の間に、社会保障関連支出は名目ベースで約35%増加。特に、低所得層向け現金給付、エネルギー・食料補助金、医療関連支出が拡大しています。一方で、利払い費も増加しており、国債利回りの上昇を背景に、利払い費は歳出全体の約15%を占めるまでになっています。これは、教育予算に匹敵する規模です。

こうした状況にもかかわらず、税制改革は議会で停滞してきました。コロンビアの税収水準は国際比較でも低く、2023年時点で租税負担率(税収/GDP)は約19%と、OECD平均(約34%)を大きく下回っています。政府はこの構造的な低税収体質を是正しようとしてきましたが、富裕層課税や法人税の見直し、IVA(付加価値税)の課税ベース拡大はいずれも強い政治的反発に遭うことに・・・。

その結果、政府は通常の立法プロセスを断念し、非常事態という強硬手段に踏み切りました。非常事態下で検討・導入が進められている施策の柱は、高所得者・富裕層への追加課税、IVA(付加価値税)の対象拡大や一部税率調整、各種税控除・優遇措置の縮小です。政府試算によれば、これらの措置によりGDP比で約1.0〜1.5%相当の追加税収を短期的に確保できるとされています。

IVAは特に重要な論点です。コロンビアの標準IVA税率は19%ですが、生活必需品(野菜等)を中心に多くの品目が非課税または軽減税率の対象となっています。その結果、IVAによる税収はGDP比で約6.5%にとどまり、OECD平均(約11%)を大きく下回っています。政府はこの「広く薄く取れない構造」を問題視しており、課税ベースの見直しを財政再建の即効薬と位置づけています。

一方で、経済界や法学者からは強い懸念が示されています。最大の争点は、この財政状況が「憲法上の非常事態」に該当するかどうかです。財政赤字や債務の拡大は数年来の傾向であり、突発的・不可抗力の危機とは言い切れないという指摘があります。この場合、非常権限の行使は違憲と判断される可能性があります。

コロンビア憲法では、非常事態下で発令されたすべての大統領令は、事後的に憲法裁判所の厳格な審査を受けます。過去には、非常事態宣言自体や、個別の税制政令が違憲として無効化された例もあります。今回の措置も、長期的に有効な制度となるかは司法判断次第です。

企業や投資家にとって、この局面は明確なシグナルを含んでいます。税負担増の可能性に加え、制度が恒久化するか否かが読めないという高い制度不確実性です。今回の経済非常事態宣言は、単なる増税の話ではなく、コロンビア財政が構造転換を迫られる段階に入ったことを示す統計的事実の表出だと言えます。

ただ長い目でみると、構造的には、コロンビアは「低税収国家」であり続けることは不可能といえそう。
現在の租税負担率は約19%で、OECD平均(約34%)との差は15ポイント以上あります。仮に社会支出を抑制しても、人口構造・格差是正政策を考えれば、税収をGDP比で少なくとも3〜5ポイント引き上げる必要があります。

これは危機ではなく、制度の成熟プロセスといった世論もあるほど。中南米主要国(チリ、ブラジル、メキシコ)も、同様の道を通っていることを考えると、コロンビアは「フツウ」の税収国家となっていくのかもしれません。

日本万博が生んだ実利──コロンビア、商談額3,460万ドルの意味と今後の展望

2025年秋に終幕した大阪・関西万博(結局私は行けず・・・)。

コロンビアは「展示の場」を「取引創出の場」へと明確に位置づけた参加国の一つとなりました。政府系輸出・投資促進機関であるProColombiaが主導した同国パビリオンには、会期を通じて延べ約130万人が来場し、公式発表では約3,460万米ドル(約50億円弱)の商談創出となりました。これは単なる関心表明ではなく、353件に及ぶビジネスミーティング、61社の海外バイヤー、44社のコロンビア企業が関与した、具体的な取引可能性を積み上げた結果といえます。

商談の中心となったのは農業・食品分野で、全体の約9割。特にコーヒーは即時性の高い商談が多く、全体の約85%を占める主力品目となりました。加えて、ハス・アボカドでは単独で約1,100万ドル規模の取引見込みが報告されており、日本を含むアジア市場での需要拡大が明確になっています。カカオ、ココナッツオイル、加工食品といった中付加価値品も一定の引き合いを得ており、一次産品依存からの脱却を意識したポートフォリオ形成が進んでいる点も注目されます。

地域別に見ると、バジェ・デル・カウカ県、アンティオキア県、クンディナマルカ県など、既に輸出基盤を持つ地域が成果を牽引しました。一方で、これまで国際市場との接点が限定的だった地域の中小事業者も商談に参加しており、万博を通じた裾野拡大効果も確認されています。需要先は中国・韓国を中心とした東アジアが約9割を占め、日本、オーストラリア、東南アジア諸国からの引き合いも複数発生しました。コロンビア農産物に対する「安定供給」「トレーサビリティ」「サステナビリティ」への評価が、価格競争力だけに依らない商談につながったと分析されています。

今回の万博参加は、短期的な商談額に加え、中長期の投資誘発効果も持ちます。公式には20件超の投資意向が確認されており、分野はアグロインダストリー、再生可能エネルギー、物流、ITなど多岐にわたります。特に農業分野では、加工・保管・輸送インフラへの投資が検討段階に入りつつあり、輸出量の拡大だけでなく単価向上につながる構造変化が期待されています。観光分野でも約1,000万ドル規模の商談見込みが示されており、農業と観光を組み合わせた地域ブランディングの可能性も広がっています。

今後の見通しとして、万博で形成された商談案件のうち、一定割合が2026~2027年にかけて実契約に移行すると見られています。複数の市場分析では、アジア向けを中心としたコロンビア農業輸出は、今後2~3年で年率5~8%程度の成長が見込まれています。仮にこの成長率が維持されれば、今回の万博由来の商談は、数年内に累計で5,000万~7,000万ドル規模の実取引に発展する可能性があります。一方で、価格変動、物流コスト、非関税障壁といったリスクも存在するため、中長期契約の確保や現地パートナーとの連携強化が不可欠となります。

大阪・関西万博におけるコロンビアの成果は、国家ブランド発信と実利創出を同時に達成した事例といえます。約3,460万ドルという数字はゴールではなく、アジア市場における持続的な農業ビジネス拡大の起点にすぎません。今後、この成果をどこまで実契約と長期取引につなげられるかが、コロンビア農業政策と企業戦略の成否を左右することになります。

<コラム>大統領選になると、農業が急に「発見」される不思議

コロンビアに来て、もう4度目の大統領選挙です。

毎回この時期が近づくと、農業が突然「発見」されるかのような錯覚に陥ります。普段は忘れられているのに、選挙前だけ脚光を浴びる。
オリンピックイヤーだけ実家に顔を出す親戚のような扱い。果たしてこれでいいのか? いいわけがない。

2026年の大統領選、現職のグスタボ・ペトロ大統領は再選できません。でも、「誰が次をやるか」以上に「これまでの路線をどう扱うか」が問われている気もします。

数字だけ見れば、農業は文句のつけようがありません。2025年、農業・農産品輸出は前年比50%前後増。GDP成長率でも農業部門は約7%と、他産業を軽々と追い抜きました。統計だけ眺めていれば、「この国、農業で食べていけるのでは」と勘違いしそうになるほど。

ところが、地方に行くと、その錯覚はあっさり壊れます。農家は豊作でも浮かれません。
理由は簡単で、儲かっていないからです。

付加価値は川下にあり、農村には残らない。輸出が伸びても、現金は中間業者と都市部を往復するだけ。この構造は、どの政権でも「問題だ」と言われ続け、どの政権でも「そのうちやる」と言われ続けてきました。

ペトロ政権は、農地改革と小規模農家支援を掲げました。方向性は正しく、理念も立派です。ただし、実行は別問題。コロンビアでは、法律が通った瞬間は「スタート」ではありません。「予定表ができた」くらいの意味合いで、簡単に反故にされます。

そして今、選挙。左派与党からは、複数の候補者が名乗りを上げています。
元大臣、元活動家、元象徴。農村インクルージョン、環境配慮、社会正義。
どれも間違ってはいません。

「それで、来年も続きますか?」
この一言に、きちんと答えられる人は、まだ見当たりません。

一方、右派・保守系候補は、わかりやすい言葉を使います。
治安、秩序、投資。農業投資において、治安は理念ではなく利回りです。
夜に畑へ入れない地域。泥棒や強盗に怯える場所に、長期資本は入りません。
この点では、彼らの主張は現実的です。

もっとも、社会的配慮は後回しになりがちです。
農業は「ビジネスだから自己責任」と言い切れるほど、単純ではありません。

中道・テクノクラート型の候補が出てくれば、市場は歓迎するでしょう。
派手な改革をしない。急に制度を変えない。
農業ビジネスにとって、これは最大の美徳です。改革よりも、変わらないことが価値になる場面も多いのです。

選挙が近づくと、候補者は必ず農村を訪れます。
長靴を履き、コーヒー豆を手に取り、写真を撮る。
この儀式は、どの陣営も欠かしません。
農家さんも慣れたもので、誰も本気では驚きません。

彼らが見ているのは、為替がどうなるか。設備投資の値段が下がるか。銀行が農村に金を出すか。つまり、写真の後です。

農業ビジネスにとって、大統領選は契約条件が、黙って書き換えられるタイミング。この選挙で、「数字だけが立派な農業」を続けるのか、「現場と資本が噛み合う農業」に進むのか。

答えは、演説にもマニフェストにもありません。
次の収穫期、畑が沈黙するか、少し饒舌になるか。
それが、この国でいちばん正確な出口調査です。

グリーン農業ファイナンス コロンビアで加速する“環境×お金”の逆転劇

コロンビアの農業に、静かですが確かな資金の流れの変化が起きています。

環境配慮型の生産者ほど有利な条件で資金を借りられる「グリーン農業ファイナンス」。単なるスローガンではなく、統計がこの潮流の現実味を支えています。

2024年のコロンビアの農業向け融資全体は約27兆ペソ(日本円で約1,080 億円)規模とされ、そのうち環境配慮型の「グリーン」カテゴリーに分類される融資は、FINAGROの発表で前年比約18%増と報告されています。特に、水資源保全、森林再生、アグロフォレストリー導入などを条件とする融資は、2021年からの3年間で約1.5倍に増加しており、農業融資の中でも成長速度が最も高い分野のひとつになっています。金融の世界で「環境・生物多様性」を指標に入れる動きが本格化し、その影響が見える数字になって現れ始めたと言えます。

象徴的な例が、アグロフォレストリー導入農家向けの補助金・低金利融資です。森林と作物を組み合わせるこの農法は、導入コストが高いため広がりにくいとされていましたが、2024年は対象農家が約12,000戸に達し、2021年の約7,000戸から大きく増加しました。土壌の保水性は平均15〜25%改善し、コーヒー農家では年間収量が8〜12%上昇した例も確認。これらのデータが金融側の“貸しやすさ”を裏付け、さらに資金が流れ込むという好循環を作り始めています。

また、生物多様性保全に関する投資額も明確に増えています。環境省によると、2024年の生物多様性関連投資は約5億ドルで、農業分野がその半分近くを占めています。特にアマゾニア地域やカウカ、高地のアンデス地域で保全活動と農業を組み合わせたプロジェクトが増え、国際金融機関からの資金流入も拡大しています。たとえばIFCが後押しするプログラムは、5年間で最大3億ドル規模まで引き上げられています。

輸出産業への影響も無視できません。欧州市場は環境基準を強化し、2025年からはECデフリステーション規制に対応しない農産物は市場アクセスが大幅に制限されます。このため、コロンビアのアボカド輸出産業は、2024年に環境認証取得面積を前年比で約30%拡大しました。バナナ産業も、カーボンフットプリント削減を条件とした契約が増え、輸出企業の40%以上がグリーンファイナンスの利用を検討していると報告されています。輸出額全体でも、環境認証を取得した農産物の売上は2020年から2024年にかけて約2.3倍に増えています。

もちろん課題もあります。まず、環境効果を評価する仕組みがまだ統一されていません。地方の小規模農家にとって、申請書類の作成やデータ提出は負担が大きく、実際には都市部に近い農家ほどグリーン融資を受けやすい傾向があります。また、地方銀行のうち約40%は、環境評価の専門スタッフを持たず、融資判断を慎重にせざるを得ないという現状もあります。

それでも、この新しい資金の流れは止まりません。金融システムが「自然を守る農家ほど信用リスクが低い」と判断し始めたのは、コロンビア農業にとって大きな分岐点です。実際、グリーン農業ファイナンスを活用した農家のデフォルト率は、従来型融資に比べ平均で0.7ポイント低いというデータも出ています。環境配慮型の農業は、長期的に見て生産の安定性が高いため、金融機関にとっても“貸しやすい”分野であることが数字に現れています。

農業はもはや作物だけでなく、水・土・森の生態系そのものを育てる産業へと変わりつつあります。コロンビアのグリーン農業ファイナンスは、その変化を数字で裏打ちしながら静かに加速しています。資金の流れが変わったとき、農村の風景も、輸出産業の姿も、持続可能性の概念も、これから大きく変わっていきます。コロンビアはその最前線に立ち始めているようです。

脱カーネーションで花咲くコロンビアの切り花産業

南米コロンビアの切り花産業はこれまで、カーネーション(洋菊に次ぐ代表的切り花品目)を中心に発展してきました。1960~70年代に欧米向けの輸出産業として急成長し、やがて世界的な花輸出国へと飛躍。ところが近年、品種多様化と市場の変化を背景に「脱カーネーション」の動きが鮮明になってきています。

コロンビアは現在、年間輸出台数・価値規模ともに世界有数の切り花生産国。2022年には輸出額が20 億ドルを超え、輸出数量も32万トンに達しました。
輸出先としては、特に米国が全体の7〜8割を占めており、2023年には輸出額20億8000万ドルのうち、米国向けが16億ドルとなっています。

一時期、カーネーションはコロンビアの切り花輸出を象徴する品目でした。たとえば7,665 haの輸出用花壇のうち17%(約910 ha)がカーネーションで、しかもその97%がクンディナマルカ県で栽培されていたのこと。
しかしながら、輸出構成を品目別にみると、2024年時点でバラが輸出額の32.8%を占めており、ハイドランジア(アジサイ系)の成長率も6.7 %という見通し。また、2024年時点でカーネーションの割合は12%前後とされ、バラ・菊・アルストロメリアなど多品目化のトレンドが顕著です。

この背景にはいくつかの理由があります。

まず、世界の花市場において消費者の嗜好が多様化し、「長持ち」「珍しい色・形」「環境配慮/サステナブル」の切り花が重視されるようになってきたこと。コロンビアでも、輸出農園の半数以上が「Florverde」などの環境・社会認証を取得し、輸出先バイヤーからの要求水準が上がっています。


次に、カーネーションは比較的栽培・出荷が容易であった一方、成長停滞・価格上昇・差別化困難という課題に直面しており、より高付加価値で希少性のある品目へシフトする動きが出ていること。実際、2023年時点で切り花輸出額は約20億ドルとなり、輸出数量は約31 万トンと前年から若干減少。輸出単価上昇=量から質へのシフトが進んでいると言えます。
輸出地域も、米国中心から、スペイン・英国など欧州や中東・アジア市場への拡大が進み、たとえば2025年前半にはスペイン向け輸出額が前年同期比で43%増加しました。

品目別では、バラが依然として主役を握っており、2024年では輸出額シェアの約33%を占めました。次いでアルストロメリア、ハイドランジアといった品種が「脱カーネーション」の象徴として注目されています。加えて、カーネーション自体も「より耐久性・輸送性・色彩バリエーション」の進化版が登場し、価格も持ち直しつつあります。

国際市場の相場については、世界の切り花輸出全体では2030年に約501 億ドル規模に達するという予測があります。
この中で、コロンビアは「量よりも質」「多品目化」「サステナブル生産によるプレミアム市場参入」という戦略が鍵となっています。たとえば米国向けでは、コロンビア産切り花が米国国内輸入切り花の約60%以上を占めるという推計も。

この脱カーネーションシフトには次のような示唆があると考えます。第一に、カーネーションに代わる品目(バラ、ハイドランジア、アルストロメリアなど)に注力している農園との連携機会があるということ。第二に、輸出先である米国・欧州・アジア市場の消費傾向・物流要件・サステナブル認証への要求を踏まえたトレーサビリティ・品質管理体制の構築が付加価値を生みやすいということ。第三に、日本市場向けに「希少品種・高品質・ストーリー性(例:コロンビア高地・多様性・環境配慮)」を打ち出して差別化できる余地があるということです。

ただし、留意すべき課題もあります。気候変動や降雨・病害虫の変化、航空輸送費の上昇、小規模農家の技術格差などです。特に「脱カーネーション=新品目展開」には設備投資・技術習得・市場開拓コストが伴うため、実装支援・リスク管理。

コロンビアの切り花産業は「カーネーション中心」から「多品目・高付加価値・サステナブル志向」への転換期にあります。日本企業・投資家・農業支援者の視点では、この変化を捉え「次の切り花輸出・ブランド構築」を共創する好機と捉えるのが有効ではないでしょうか。

コロンビアで揺れるGM作物論争について:伝統と生物多様性をめぐるビジネスの分岐点

コロンビアの農業界では、GM(遺伝子組み換え)作物をめぐる議論が「静かな戦争」のように深刻かつ戦略的に展開しています。これはただの技術導入の是非ではなく、文化、経済、国際競争力、食料主権、生物多様性という複数の軸が交錯した大きなビジネス問題です。

まず注目すべきは「種の守護者(Seed Guardians)」と呼ばれる小規模農家や先住民コミュニティの存在です。特にナリーニョ県などでは、彼らが伝統的な在来トウモロコシ品種を守る運動を続けており、単なる栽培材料以上に「種=文化」であるという認識があります。彼らはGM種子を強く警戒し、その導入が在来品種との交雑を引き起こし、生態的・文化的遺産を失うリスクを訴えています。

一方、商業農業やアグリビジネスの側では、GM作物の導入は競争力を高める重要な選択肢です。害虫耐性や除草剤耐性を持つGMトウモロコシは、収量の安定化に貢献し、農家にとってコスト削減や生産性向上の手段になるからです。大規模・中規模農家にとっては、GM技術は国際市場、特に家畜飼料向けや穀物市場での強みをつくるツールにもなり得ます。

しかしこの論争には具体的な数字も背後にあります。コロンビア農業機関(ICA)によれば、2023年には 15万4,677ヘクタール がGM作物で栽培され、これは過去最高を記録しました。

その内訳では、GMトウモロコシが 14万2,711ヘクタール を占め、前年から 20%増加。これは国内トウモロコシ全体の約 36% にあたり、GMコーンが急速に普及していることを示しています。

このGM作物の普及拡大は、政策の場でも激しい議論を巻き起こしています。2024年には、GM種子の国内規制あるいは禁止を求める法案が議会で提出されました。

この動きには、先住民団体、環境団体、農民組合などが賛同しており、食料主権(自分たちの種をどう管理するかを決める力)を守る闘いだと位置づけられています。

一方で、アグリバイオ(農業バイオテクノロジー)業界や一部科学者からは「技術を閉ざすのは生産性や食料安全保障を脅かす」との反論があり、議論は国としての方向性を問うものになっています。さらに重要なのは、生物多様性の損失という長期リスクです。コロンビアには少なくとも 23の在来トウモロコシ品種 が存在しており、地域ごとに適応したローカル品種が多様に残っています。

GM作物が広がることで交雑し、在来種が失われていくと、生態系としての強みや文化的資産が薄れてしまう可能性があります。これは、単なる農業の効率化以上の問題です。また、GM作物は必ずしも「大農家だけ」に恩恵をもたらすとは言えません。GM種子は特許があるものが多く、毎年購入が必要になる種類もあるため、小規模農家がそれを負担に感じる可能性があります。種の自家保存が難しくなれば、伝統農家は技術の恩恵を受けながらも依存を強めるリスクがあります。

一方で、アグリバイオ側はGM作物がコロンビアの食料輸入依存を下げる可能性を強調します。実際、報道によればコロンビアは年間に何百万トンもの食料を輸入しており、国内生産力を強化する戦略の一環としてGM技術を推進すべきだ、という主張があります。
彼らはまた、気候変動や病害虫への耐性を持つ作物を育てることで将来的なリスクに備えるべきだと論じています。

議会レベルでも、法案はまだ最終採決には至っておらず、8回の立法論議が必要だとされています。
つまり、コロンビアにとってはGM作物をどう扱うかが、農業戦略だけでなく、国家の農業ビジョンそのものの岐路になっているわけです。

この論争のビジネス的な意味は非常に大きいです。もしGM作物に対して強い規制が敷かれれば、コロンビアの輸出農業(特に大豆や穀物)は生産コストや技術の選択肢で制限を受ける可能性があります。逆に規制が緩和されてGMがさらに広がれば、小規模農家と在来種を守る運動との対立が深まり、生物多様性や文化価値を損なうリスクがあります。

最後に、この論争はコロンビアが目指す農業像を象徴しています。効率性と国際競争力を追う近代農業の道、あるいは伝統、自治、食の主権を守る道。どちらを選ぶかによって、コロンビアの未来の農業は大きく変わるでしょう。そしてその決断は、単なる農業技術の選択を超えて、社会、文化、そして国際市場での立ち位置を左右する重大な分岐点なのです。

お米フェス、11月28日実現へ — トリマ県がアグリ・チェーンに光

写真はインディカ米。私も毎日、カリ地場企業Blanquitaの玄米をかみしめております。

コロンビア中部トリマ県で、稲作産業の価値を再定義する象徴的なイベントが実現しようとしています。県都イバゲを中心とする一帯は、国内屈指の稲作地帯(コロンビアの魚沼)として知られていますが、その魅力を体系的に発信する場として「年次お米フェスティバル(Festival Anual del Arroz)」が11月28日に初めて開催される見通しとなりました。条例化と制度化を主導したのは、トリマ県議会のエステファニ・サンチェス議員。同議員が丹念に積み上げてきた政策提案と議会での働きかけが、この節目の実現につながっています。

エステファニ・サンチェス議員。みずみずしいお肌はおコメのおかげかな。

今回のフェスティバル開催は、まさにこの原産地名称の価値を立体的に伝える場となります。サンチェス議員が条例案で強調したのは、生産と文化をつなぐイベントとしての意義。稲作農家、加工業者、流通事業者、料理関係者が一堂に会し、稲作産業のバリューチェーン全体を可視化することが期待されており、参加者が互いの立場や技術を理解し、新たな商談や協働のきっかけを生み出す場として機能する可能性があります。

イバゲ周辺の稲作は、単なる農業生産を超えた地域資源。その背景には、2016年に取得した「原産地名称(Denominación de Origen Protegida/DOP)」の存在があります。原産地名称とは、特定の産地の環境・文化・技術が品質に直接影響を与える産品に対して付与される制度で、イバゲ高原(Meseta de Ibagué)で栽培される米は、地質、標高、気候が組み合わさることで独自の風味と品質を持つと評価されています。昼夜の寒暖差、火山性土壌、水系の豊かさが互いに作用し、粒の張りや香り立ちの良さにつながっています。さらに、標高1000メートル前後の高原での稲作は高度な栽培技術を必要とし、こうした地域の知見の積み重ねが公式に認められた形となっています。この原産地名称は、地域経済において重要な意味を持ちます。品質の裏付けとなる制度があることで、一般米との差別化が明確になり、ブランド力が高まります。その結果、生産者は価格面で有利になりやすく、市場競争の波に飲まれにくくなります。また、加工業者や食品企業が「イバゲ産」を前面に出した商品開発を行いやすくなり、流通業者にとっても説得力のあるマーケティング素材となります。観光面でも効果は大きく、「土地の物語性」を持つ食品はアグリツーリズムや地域イベントとの親和性が高く、訪問者にとって魅力的な体験価値を提供します。

また、フェスティバルは地域の技術向上にも貢献します。講習会、展示、実演などを通じて、最新の農業技術や市場動向が農家に共有されることが想定されており、これまで個々の生産者に委ねられてきた知識や技能が、地域全体の財産として蓄積されていきます。こうした取り組みは、生産性の向上や品質の安定、さらには輸出を含む販路拡大に寄与します。

トリマ県の稲作は、量の面でも国内で大きな存在感を示しています。近年は約10万ヘクタール超の作付け面積が確保され、年間生産量は60万トン台後半に達しています。コロンビア国内の主要な米供給地の一つとして位置づけられており、同県の経済にとって稲作は基幹産業です。こうした生産力に原産地名称という“質の証明”が加わることで、トリマ県の稲作は新たな局面を迎えています。

11月28日に開かれる初回フェスティバルは、地域の稲作が「産地」から「ブランド」へと成長するための重要なステップとなります。制度化されたことで毎年開催される枠組みが整い、投資、研究、観光、食文化を巻き込んだ複合的な発展が見込まれます。イバゲの米が持つ価値を国内外に向けて発信することで、地域経済に長期的な好循環をもたらす可能性があります。

今回の取り組みは、トリマ県が稲作産業の未来に向けて明確なメッセージを発信した出来事と言えます。原産地名称を基盤に据えながら、栽培、加工、流通、文化、観光をつなぐ総合的なアプローチが、地域をさらに強くしていきます。フェスティバルが定着し、地域の多様なプレーヤーが参画していくことで、イバゲの稲作はより豊かな物語をまとい、国際的な存在感を高めていくはずです。私も生憎今年は駆けつけられず、来年は伺う予定です。

コロンビア、政権交代期の行方 ― 大統領選が左右する農業ビジネスの未来

写真はメデジン地方のグアタペ。まるでヨーロッパにいるような景色・・・。

2026年に予定されているコロンビア大統領選挙を前に、同国の政治と経済は大きな転換点を迎えています。

現職のグスタボ・ペトロ大統領は、左派として初めて政権を握り、社会的包摂と環境重視を掲げた政策を進めてきました。エネルギー転換や土地改革を中心とした改革路線は一部の国民から支持を集める一方、経済界や中間層からは懸念の声も。次期大統領が誰になるかによって、コロンビアの農業ビジネスの方向性は大きく変わる可能性があります。

コロンビア経済において、農業は依然として基幹産業です。GDPの約8%を占め、雇用人口の3人に1人が農業に関わっているほか、伝統的なコーヒーや花卉、バナナに加え、近年ではアボカドやカカオ、ライムなど輸出志向の高い作物が急成長しています。特にアボカドは、欧州市場で「グリーンゴールド」と呼ばれ、メキシコに次ぐ生産国としての地位を確立しつつあります。輸出量の増加は外貨収入の安定に寄与し、農村地域の経済を支える重要な柱となっています。

ペトロ政権は「公正な農業改革」を掲げ、土地の再分配や小規模農家への資金支援を進めてきました。農村開発公社を通じて未利用地の再活用を促進し、女性農業者への支援プログラムも拡充しています。また、気候変動の影響に備えるため、灌漑施設の整備やスマート農業技術の導入も推進されています。こうした政策は、農業の持続可能性を高める一方で、民間投資の慎重化という副作用も生んでいます。外資企業の一部は、政策の不透明さや税制の変化を懸念し、新規投資を一時的に見送る動きも見られます。

一方、外資による生産体制の強化は引き続き進んでいます。オランダやイスラエル、スペインの企業は、輸出用アボカドやライムの加工・選果施設を相次いで建設し、コールドチェーン(低温物流)を含むサプライチェーン全体の効率化を図っています。欧州市場における需要の拡大に対応する形で、最新のトレーサビリティ(生産履歴追跡)技術を導入する企業も増えています。これらの取り組みは、品質と安全性を重視する国際市場での競争力を高める結果につながっています。

今後の焦点は、次期政権がどのような農業政策を打ち出すかです。保守派候補の一部は、外資投資の再活性化と輸出拡大を優先する方針を明言しています。これに対して、左派系の後継候補は、土地分配や農村開発を引き続き重視する姿勢を示しており、政策の方向性が大きく異なります。コロンビアの農業は、経済政策と社会政策の狭間で揺れているのが現状です。

気候変動も、次期政権の重要な課題となります。異常気象による干ばつや豪雨が頻発し、特にアンダス地方ではコーヒーの収量が年々不安定になっています。政府と民間が連携し、耐乾性作物の導入や土壌改良技術の普及を進めることが求められています。環境保全と生産性向上を両立させる「クライメート・スマート農業」への転換は、国際的な投資潮流にも合致しており、日本を含む海外企業の参入機会が広がっています。

日本企業にとっても、コロンビア農業は新たなビジネスチャンスを秘めています。たとえば、農業機械、バイオ肥料、ICTを活用した気象予測システムなどの分野で、技術協力や共同プロジェクトの可能性が高まっています。また、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の観点からも、地域社会と連携した持続可能な農業モデルは注目に値します。

コロンビアの農業は今、政治・気候・国際経済という三つの要因の交差点に立っています。次期大統領の政策が、同国の農業を「包摂的成長」へ導くのか、それとも市場志向型の拡大路線へ戻すのか。その選択は、国内農家のみならず、世界の食料市場にも影響を与えることになります。

政権交代の行方を見極めることは、コロンビア農業ビジネスの未来を読むことにほかなりません。

外資が動くコロンビア農業 ― アボカドとライムで広がる輸出拠点化の波 ―

2025年、コロンビアの農業分野で外資系企業による生産・加工体制の強化が進んでいます。その象徴的な事例が、米国の大手青果企業フレッシュ・デル・モンテ・プロデュース社(Fresh Del Monte Produce Inc.)と、コロンビアの農業企業マナグロ・グループ(Managro Group)による合弁事業です。両社は、アボカドおよびライムの輸出向けパッキング施設を拡張し、コロンビアをラテンアメリカの主要な青果輸出拠点として位置づける計画を進めています。

このプロジェクトは、2025年上半期に発表され、アンティオキア県やヴァジェ・デル・カウカ県を中心に展開されています。新設されるパッキングハウスには、最新の選果・冷却・追熟技術が導入され、欧米市場向けに安定供給を図ります。生産能力は従来比で約2倍、年間処理量はアボカドで約3万トン、ライムで1万5000トンに達する見通しなんだとか。

フレッシュ・デル・モンテ社は世界90カ国以上に流通網を持ち、サステナブル農業と現地生産の強化を掲げています。コロンビアは地理的多様性と安定した気候により、アボカドやライムなど熱帯果実の周年生産が可能な国です。マナグロ・グループのような現地企業との協業により、同社は「地産地消型サプライチェーン」と「輸送コスト削減」を両立させることを狙っています。

背景には、世界的なアボカド需要の拡大があります。国連食糧農業機関(FAO)の統計によると、アボカドの国際取引量は過去10年間で約2.5倍に増加し、2024年には世界総取引額が約90億ドルに達しました。主要生産国メキシコ、ペルーに続き、コロンビアは第三の輸出大国として台頭しています。2024年のコロンビア産アボカドの輸出額は約2億8千万ドル(前年比+37%)に上り、米国、欧州連合、日本が主な輸出先です。

ライムもまた、輸出拡大が顕著です。米国市場ではメキシコ産ライムの供給不安定化を背景に、コロンビア産の需要が高まっています。2025年の輸出量は前年比25%増と見込まれ、欧州市場でも販売網の拡大が進行中です。輸出ライムの平均単価は1キログラムあたり1.1ドル前後と堅調で、高品質志向の市場に支えられています。

こうした外資の投資は、コロンビア農業が「原料輸出」から「付加価値輸出」へと進化する兆しを示しています。これまで農家は果実をそのまま輸出業者へ販売する形が主流で、国内での利益は限定的でした。しかし、選果・包装・冷却といった工程を国内で行うことで、品質の一貫管理と雇用創出が可能になります。マナグロ・グループによれば、この合弁事業で約500名の直接雇用と1000名超の間接雇用が見込まれています。女性雇用の拡大も顕著で、農村部の社会的包摂を促す効果が期待されています。

コロンビア政府もこの動きを支援しています。農業省と商工観光省は、外資企業との連携を通じた輸出型農業の拡大と、環境配慮型農業への移行を推進しています。EUのサステナビリティ基準を満たすため、再生可能エネルギーによる冷却施設やトレーサビリティ(生産履歴追跡)システムの導入を支援する政策も始まりました。2024年には、農業総生産に占める輸出向け作物の割合が26%まで上昇し、農業が経済成長の原動力となりつつあります。

ただし、輸出規格に対応できる大規模農家と、資金や技術に乏しい小規模農家との格差は依然として課題です。契約栽培や技術移転を通じて「共に成長できる仕組み」を整えることが、持続的な発展には不可欠です。

こうした中で注目されるのが、日本企業にとってのビジネスチャンスです。コロンビアの農業は、今まさに加工・流通・品質管理のインフラを整えつつあり、「技術導入」と「ブランド形成」の余地が大きい段階にあります。日本が得意とする分野――たとえば精密な農業機械、低温物流システム、品質検査装置、そして食品加工技術や米粉・発酵技術(お、これは弊社の活動と重なる!)など――は、コロンビアの付加価値型輸出モデルと極めて相性が良いといえます。

さらに、現地企業と連携した共同研究や人材育成プロジェクトも期待されています。環境負荷を抑えつつ高品質な果実を生産するためのスマート農業技術、自然エネルギーを利用した乾燥・保管システム、地域住民の技能研修など、日本企業が「技術と人材」で支える分野は多岐にわたります。コロンビア政府が推進するグリーン輸出政策と歩調を合わせることで、日本の企業は単なる取引相手としてではなく、共創パートナーとしての地位を築くことが可能です。

アボカドやライムに象徴される今回の外資導入は、単なる農業投資にとどまりません。これは、コロンビア農業が世界市場へと飛躍する「構造転換」の始まりであり、日本企業にとってもラテンアメリカでの新たな参入機会を示唆する動きです。持続可能で高付加価値な農業をともに築くことで、両国の関係はさらに深まり、アジアと南米を結ぶ新たな食の架け橋が生まれる可能性があります。外資と地場の知恵が融合し、地域社会に利益をもたらす形での成長モデルを築けるか。コロンビア農業の未来は、今まさにその岐路に立っているとみています。

米国との関係がビジネスにも波及 コロンビア経済、揺れる通商バランスと新たな機会

コロンビアと米国の関係が、政治・安全保障だけでなく経済の現場にも大きな影響を及ぼしています。近年、両国の間では通商や投資の動きが微妙に変化しており、輸出入の構造や外資企業の動向に波が生じています。こうした変化は、農業、エネルギー、製造業といった主要産業だけでなく、中小企業や地域経済にも広がりつつあります。

コロンビアは2006年に米国との自由貿易協定(FTA)を締結し、2012年に発効しました。以来、米国はコロンビア最大の貿易相手国であり続け、輸出入の約25%を占めています。主な輸出品は原油、コーヒー、花、鉱物資源など。一方で、輸入は機械、電化製品、農業機械、医薬品、自動車部品などが中心です。

しかし2024年以降、この安定的な関係に小さな変化が見え始めました。米国の金利高止まりとドル高傾向が続く中、コロンビア・ペソは相対的に弱含み、輸入コストが上昇しています。また、ペトロ政権が進めるエネルギー転換政策に対して、米国の一部企業が慎重な姿勢を見せ始めており、原油関連の投資計画の見直しも相次いでいます。

一方で、別の側面からはチャンスも広がっています。米中対立の激化を背景に、米国企業がサプライチェーンの再編を進めており、「ニアショアリング(生産拠点の近隣国移転)」の候補地としてコロンビアへの注目が高まっています。特にメキシコに次ぐ製造拠点として、カリ、メデジン、バランキージャなどの都市が物流拠点候補として挙がっています。

米国商工会議所の報告によると、2025年上半期だけでも、米国系のテクノロジー企業5社がコロンビア国内で拠点設立を検討しているとされています。これにより、関連する物流・倉庫業、建設業、人材派遣業などに新たなビジネス機会が生まれる見通しです。

農業分野でも、コロンビア産コーヒーやカカオの輸出に追い風が吹いています。米国市場では「サステナブル認証」製品への需要が高まり、環境に配慮した生産体制を持つコロンビアの中小農家が再評価されています。特にフェアトレード認証を受けたコーヒー豆は、米国西海岸の高級カフェチェーンに採用されるケースが増加しています。

とはいえ、関係は順風満帆というわけではありません。近年、ペトロ大統領が米国の対麻薬政策に対して批判的な立場を取るようになったことで、外交面では微妙な緊張が見られます。特に、米国がコロンビアへの軍事・治安支援を通じて強い影響力を保ってきたことに対し、「自立的な国家運営を進めるべきだ」との声が国内で高まっています。こうした政治的な距離感の変化は、投資家心理にも影響を与えかねません。

加えて、米国による南米地域全体への製造回帰政策が進む中で、メキシコやペルーといった近隣諸国との競争も激化しています。特にインフラ整備や電力コストの面で、コロンビアは依然として課題を抱えています。物流効率を高めるための港湾・鉄道インフラ投資や、電力網の安定化が急務とされています。

こうした中、コロンビア政府は「持続的かつ公平な経済発展」を掲げ、対米経済戦略の見直しを進めています。具体的には、米国向け一次産品依存からの脱却を図り、加工食品、医療機器、IT関連サービスといった高付加価値分野への輸出拡大を目指しています。また、外資企業に対する法人税の優遇措置や、スタートアップ支援プログラムの拡充も打ち出しています。

ビジネス現場では、こうした政策転換をチャンスと見る動きも出ています。カリの物流企業代表は、「米国との関係は依然として経済の生命線だが、依存ではなく連携の形を模索する時期に来ている」と語ります。つまり、米国資本を呼び込むだけでなく、コロンビア発の製品や技術を逆輸出する時代へ移行しつつあるのです。

まとめると、コロンビア経済は今、米国との複雑で多層的な関係の中にあります。為替、エネルギー、外交、投資——どの要素もビジネス環境に直接的な影響を与えています。短期的には不安定な要素も多いものの、中長期的にはコロンビアが「南米の生産・物流拠点」として存在感を高める可能性を秘めています。両国関係の動きは、今後のコロンビアのビジネス戦略を占う試金石になるでしょう。

コロンビア、気候変動と戦う「農業保険」の新潮流

コロンビアの農業に、新しい風が吹いています。アメリカの大手保険グループ Liberty Mutual Reinsurance が、農家向けにパラメトリック農業保険を発表。“天候まかせの産業”に、データが介入する時代が到来です。

仕組みはいたって合理的。洪水や干ばつなどの「異常気象の発生」を、衛星データや気象観測システムで自動的に検知し、その数値(=パラメータ)に基づいて補償金を支払うというものです。要するに、“天候の指標”が一定のラインを超えたら自動的にお金が出る。これまでのように被害調査を待って長い書類手続きを踏む必要はなく、迅速かつ透明に補償が行われます。

この仕組みが注目を集めている背景には、コロンビア農業が直面する気候リスクの急増があります。かつて“春の国”と呼ばれたこの国も、近年では乾季に豪雨が降り、雨季に干ばつが続くというまるで天気の気まぐれショー。農地の冠水や収穫の遅れが相次ぎ、小規模農家の中には再起できないまま離農するケースも出ています。

それでも、農業はコロンビア経済の屋台骨です。2025年上半期、農業・農工業の輸出は前年比5割増という過去最高を記録しました。コーヒー、パーム油、アボカドなどの輸出作物が好調な一方で、気候変動による不安定さが増し、収益の予測が立てにくくなっているのも事実。
そんな中で登場したのが、この「気象データをもとに支払う保険」なのです。

パラメトリック保険の最大の魅力はスピードです。被害が起きてから調査員が現地に来るのを待つ必要がなく、数値が閾値(しきいち)を超えた瞬間に補償が動く。洪水でトラクターが流された農家にも、干ばつで収穫量が激減した農家にも、“データに基づく公平な支払い”が保証されます。まるで、「天気予報が保険金を出す世界」と言えば、イメージしやすいかもしれません。とはいえ予想収益100 万ドルの農場なら、保険料が年10 万ドル(=10%)という保険料となるんだとか。ただし、リスクが高ければもっと上がるし、補償範囲が限定的ならもっと下がる見込みです。

この方式はすでにアフリカや中米の一部でも導入が進んでおり、モバイル決済と連動して農家の口座に直接補償金が振り込まれるケースもあります。技術と金融がタッグを組むことで、従来の保険が届かなかった小規模農家を包み込む動きが始まっているのです。

ただし、万能薬ではありません。まず、気象データの精度が命綱です。観測地点が少ない山間部では誤差が大きく、被害が出ているのにデータ上は“平常”と判定されることもあります。また、保険料の設定も課題です。天候リスクが高い地域ほど保険料も上がり、資金力の乏しい農家には手が届きにくくなる。金融包摂(ファイナンシャル・インクルージョン)の理念をどう実現するかが問われています。

とはいえ、今回のLiberty Mutualの取り組みは、農業を「不確実性の塊」から「リスクを設計できる産業」へと進化させる試みと言えます。保険や金融といった“畑違い”の業界が、農村にテクノロジーと資金を持ち込む。そこには、気候危機時代の新しいビジネスチャンスが広がっています。

さらに面白いのは、これが単なる保険ビジネスにとどまらないことです。気象データを基盤にすれば、将来的には農業投資や炭素クレジット取引にも応用できます。どの地域がどれだけリスクを抱えているか、どんな気候パターンで収穫量が変動するか。こうした情報が蓄積されれば、農業はより透明で、投資可能な産業へと変わっていくでしょう。

コロンビア政府も、こうした動きに注目しています。国家農業研究所(Agrosavia)や環境省が、農村地域の気象観測インフラを強化し、データ連携を進める計画を進行中です。国が後押しすれば、民間の金融商品との連携が進み、農家のリスク管理能力は飛躍的に高まるはずです。

気候変動が「これまでにない災害」を生む一方で、そこにビジネスチャンスを見出す企業も増えています。農業はこれまで、空を見上げて祈るしかなかった産業でした。しかし今は、衛星を見上げ、データを読み、契約書で未来を設計する時代。

天候を“敵”にせず、“数値化して味方にする”。
それが、コロンビア農業の次なる挑戦なのかもしれません。

コロンビア、次の成長戦略は「機会作物」──ピーチパームとチャヨーテに光を

コロンビア政府がいま注目しているのは、コーヒーでもカカオでもありません。新たな農業戦略のキーワードは「機会作物(opportunity crops)」です。その先頭に立つのが、ハヤトウリ(Bactris gasipaes)とチョンタドゥーロ(Sechium edule)の2つの作物です。どちらも一般にはあまり知られていませんが、将来性の高さから“次の主役候補”として大きな注目を集めています。

ハヤトウリ

チョンタドゥーロ

チョンタドゥーロはアマゾン原産のヤシ科植物で、果実は赤やオレンジ色を帯びた丸い実をつけます。その味は栗やカボチャに似ており、南米ではゆでて塩をふり、軽食として親しまれてきました。栄養価が非常に高く、「森のスーパーフード」とも呼ばれます。一方のハヤトウリはウリ科のつる性植物で、緑色の洋ナシのような外見をしています。日本では「隼人瓜(はやとうり)」として知られ、シャキッとした食感が特徴です。

この2つの作物が注目される背景には、コロンビア農業省と国際作物多様性機関(Crop Trust)による共同プロジェクトがあります。目的は、農業の多様化と気候変動への適応力(レジリエンス)の強化です。

コロンビアの農業はこれまで、コーヒー、バナナ、花卉といった主要輸出品目に依存してきました。しかし近年、異常気象の増加や国際市場の価格変動によって、農家の収益が不安定化しています。こうした状況を受け、政府はより多様な作物への転換を進めています。その中核をなすのが「機会作物」戦略です。

Crop Trustは、世界各国で作物の遺伝的多様性を保護する国際機関です。同機関は、各国が自国固有の作物を見直し、地域資源として再開発することを提案しています。コロンビアでは2025年、候補作物48種の中からチョンタドゥーロとハヤトウリが選定されました。どちらも栄養価が高く、気候変動に強く、加工・輸出の潜在力を持っている点が評価されたのです。

チョンタドゥーロの果実は、たんぱく質・βカロテン・鉄分が豊富で、地元ではゆでたり、ペーストにしてスープやスナックに利用されています。さらに搾油も可能で、赤みを帯びたオイルは抗酸化成分を多く含み、健康志向の高い市場で「プレミアム植物油」として注目されています。南部プトゥマヨ県では、すでに地元農家が小規模な加工施設を整備し、チョンタドゥーロオイルを首都ボゴタやメデジンの健康食品店に出荷し始めています。

一方、ハヤトウリは成長が早く、病害虫にも強い作物です。標高1,000〜2,000メートルの山間地でもよく育つため、気候変動の影響でトウモロコシや豆の収穫が不安定な地域では、代替作物として期待されています。アンティオキア県では、農協と大学が連携し、ハヤトウリの冷凍加工やピクルス製品の試作を行っています。アジア市場、とりわけ日本や韓国での健康志向を意識した取り組みが進行中です。

コロンビア政府はこれらの取り組みを実験的な試みではなく、国家レベルの成長戦略として位置づけています。農業省の計画によると、2026年までに10県でパイロット事業を展開し、生産・加工・輸出の一貫体制を構築する方針です。また、作物ごとの最適地域マップを作成し、農家への技術支援や資金援助も拡充する予定です。これは、いわば「コロンビア版・次世代フードバリューチェーン」の形成といえます。

もちろん課題も残っています。チョンタドゥーロは幹に鋭い棘があり、収穫作業が難しくコストが上がりやすいのが難点です。ハヤトウリは鮮度が落ちやすいため、コールドチェーン(低温物流)の整備が欠かせません。また、どちらの作物も大規模商業栽培の経験が浅く、収穫から加工・流通までのノウハウを蓄積する必要があります。

それでも、専門家の間では「挑戦する価値がある」という見方が広がっています。農業研究機関Agrosaviaの経済学者マリア・エスコバル氏は、「チョンタドゥーロとハヤトウリは単なるニッチ作物ではなく、地域経済の新しい柱になり得る。特に女性農家や若者の参入が進めば、地方経済の再生につながる」と語ります。

世界では、かつて“忘れられた作物”だったキヌアやアマランサス、モリンガなどが再評価され、国際市場で成功を収めています。チョンタドゥーロとハヤトウリもその流れに続く可能性があります。

気候変動に揺れる21世紀の農業において、真に強い作物とは「頑丈なもの」ではなく、「しぶとく生き延びるもの」です。チョンタドゥーロの鋭い棘も、ハヤトウリのしなやかなつるも、そのしたたかさの象徴といえるでしょう。コロンビアがこの2つの作物でどこまで世界市場を驚かせるのか、今後の展開が注目されています。

コロンビアで始まる、「種をめぐる戦い」について

コロンビアの田舎町ナリーニョで、農家たちが小さなトウモロコシ畑を守ろうと立ち上がっています。彼らが守っているのは、何世代にもわたって受け継がれてきた“在来種の種(たね)”。一方で、国の政策や大企業は「もっと早く、もっとたくさん収穫できる」遺伝子組換え(GM)作物の導入を進めています。
この“種をめぐる戦い”が、いまコロンビアの農業界を揺るがせているのは一体なぜなのか?

コロンビア南部、ナリーニョやカウカといった山岳地帯では、「ガーディアネス・デ・ラス・セミージャス(種の守り人)」と呼ばれる農民たちがいます。彼らは自分たちの畑で育てた在来種のトウモロコシを守り続けています。「この種は、祖父の祖父の代から守ってきた宝だ」。そんな言葉が聞こえてきそうです。

 彼らの最大の心配は、GM作物の花粉が風で飛び、自分たちの畑のトウモロコシと交ざってしまうこと。もし交雑が進めば、伝統的な品種の特徴や味、色、香りといった“個性”が失われてしまいます。「種が交ざる=文化が消える」。そうした危機感が確かにあるのです。

一方、政府や一部の農業団体はGM作物の導入を「現代農業に欠かせない技術」だと位置づけています。
「害虫に強く、収穫量が増え、農薬の使用も減る」。実際、GMトウモロコシを使っている農家の中には、生産コストが2割近く下がったという報告もあり、これはあくまでワクチンを打った子どものようなものという意見も。

コロンビア政府内でも意見は真っ二つに分かれています。農業省は導入を推進する一方、環境省は「地域の食文化や生物多様性を守るべきだ」と慎重です。2025年6月には、ついに「遺伝子組換え種子の輸入と販売を禁止する法案」が議会に提出され、大きな波紋を呼びました。この動きは、アグリビジネス業界にとって大きな関心事です。種子や農薬を扱う多国籍企業は、「科学的根拠を無視した感情的な規制だ」と反発しています。もし禁止法案が通れば、企業の投資計画や契約が不安定になり、外国からの投資も減る可能性があります。

 ただし、見方を変えれば「新しいビジネスチャンス」も見えてきます。世界的にオーガニック志向が高まる中、コロンビアの在来品種や非遺伝子組換え農産物は、ヨーロッパや日本市場で“安全で自然な食”として高く評価される可能性があるのです。
すでに一部の地域では、在来種を使った有機農業や、伝統的なトウモロコシ粉を使った商品ブランド化が始まっています。

実はこの問題、コロンビアだけの話ではありません。
 お隣のペルーやエクアドルでは、すでにGM作物の栽培を禁止する「モラトリアム(猶予期間)」が設けられています。一方で、アルゼンチンやブラジルは、遺伝子組換え作物を積極的に輸出して外貨を稼いでいます。
 つまり、南米は「GM推進派」と「自然派」に二分されているのです。

 コロンビアがどちらの道を選ぶかは、地域全体の農業政策や国際取引にも影響します。もし「非GMの国」としてブランド化できれば、高価格市場へのアクセスが広がるかもしれません。逆に、禁止によって生産性が下がれば、輸入依存が進むリスクもあります。

GM作物をめぐる議論は、単なる技術論ではありません。
 「誰が食料をつくり、誰がその権利を持つのか」
 「私たちは何を食べて生きたいのか」
 そんな問いを、コロンビア社会全体に投げかけています。

 政府の政策、企業の利益、農家の誇り、そして消費者の価値観。
 それぞれの立場が交錯する中で、コロンビアの農業は岐路に立っています。

 畑の片隅で、今日もひとりの農夫が、自分の手で種を選び、土を耕しています。
 その小さな手の中に、コロンビアの未来が握られているのかもしれません。

コロンビア・カリ近郊で芽吹くカカオ新潮流 ― 日本市場とラム酒の可能性

今年の一時帰国の際に、「日本向けにカカオを輸出したい」と思いに火がつきました。それも、イバゲやサンタンデールではなくて、このカリ付近で。もちろん、南西部のバジェ・デル・カウカ県はまだ新興地であることはわかっているけれど、以前からずっと高品質なカカオづくりを目指す生産者が増えていることは聞き及んでいたし、農業投資家や食品加工業者から「次の成長産業」として期待されつつあるのです。

(カリはここです)

1.高品質市場を狙うカリの農家

この地域は、サトウキビやコーヒーと並んで農業基盤が強い。もともと多様な作物栽培に適した肥沃な土地を持つため、カカオ栽培に転じる生産者が増えているそう。

近年では、国際市場で需要が拡大する「フィノ・デ・アロマ(Fino de Aroma)」と呼ばれる高品質カカオの生産が注目されていますよね。日本でもチョコレートの高級化が進み、原料段階での品質やストーリー性を重視する傾向が強まっているのは見ての通り。産地のトレーサビリティや農家の顔が見える原料調達は、日本のクラフトチョコレートメーカーや菓子企業にとって魅力的な要素だ。カリ近郊のカカオはまだ輸出量が少なく、「新しいブランドストーリー」を探す日本企業にとって掘り出し物となる可能性があるのでは、と勝手に思っています。

2.課題と可能性 ― 日本への輸出は?

もっとも、コロンビアから日本へのカカオビーンズ輸出は、物流・品質管理・規模の三つの課題がありそう。まず、コロンビアからの直行便が少なく、コンテナ輸送のコストが高い。さらに、日本の食品衛生法や農薬残留基準に適合させるには、生産段階での厳密な管理が必要だ。規模についても、カリ近郊は小規模農家が中心で、安定供給には生産者団体の協力や契約栽培の仕組みづくりが不可欠となります。しかし、このハードルは裏を返せば①数量よりも品質・ストーリー・希少性を重視する消費者の期待にこたえられる、②少量でもユニークなカカオを届けられれば十分に競争力を持つ(たとえば、単一農園のカカオをそのまま輸出し、「カリ近郊発のシングルオリジン」として日本でブランド展開すれば、産地の知名度を高めながら付加価値を生み出せる)。

3.ラム酒とのかけ合わせ ― 食文化の新しい可能性

さらに目論んでいるのは、カリ近郊のカカオとカリブ海文化圏を象徴するラム酒との融合。コロンビアでもカリブ沿岸地域を中心にラム酒生産(!)が盛んだが、近年はカクテル需要の高まりからプレミアムラムも注目です。

チョコレートとラム酒の相性は抜群なので、例えば奄美産ラムとカリ近郊のカカオを組み合わせれば、「原産国同士のストーリーあるペアリング」として新たな商品カテゴリーを生み出せます。日本でもウイスキーや日本酒とのペアリング文化が浸透しつつあり、その延長線上で「ラム×カカオ」の組み合わせは面白い挑戦になるだろう。たとえば、ラム酒に漬け込んだカカオ豆や、カカオニブを使ったラムボンボンといった商品は、バレンタインや高級バー市場に適した新商材となるかもしれません。

4.AKARI SASで着手することは?

カリ近郊でのカカオ生産はまだ発展途上にあります。しかし、持続可能性や高品質志向といった世界的な潮流、そして日本市場におけるクラフト・プレミアム志向の高まりは、この地域の農家にとって大きな追い風。さらに、日本産ラム酒や他の地域資源と掛け合わせることで、単なる一次産品輸出にとどまらない新たな付加価値を創出できる。

今はまだ萌芽といえる「カカオの新しい物語」ですが、早速地場カカオ協会にコンタクトをとり、面白い生産業者の選定にあたっています(この、おいしいか希少性があるか、ではなくて、おもしろいか否かで判断するのが弊社らしい。迷ったらアホな方を選択する社長なのです)。輸出への挑戦は簡単ではありませんが、少量高品質・ストーリー性・他産品とのペアリングといった切り口で攻めれば、日本とコロンビアを結ぶ新しいビジネスの芽が育つと、私は確信しています。乞うご期待!