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2025年4月、当地経済紙Portafolioによるとグスタボ・ペトロ大統領は長年の課題と
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コロンビアは長年、世界最大級のコカ(コカイン原料)栽培国として知られてきました。国際社会か
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コロンビア政府は2025年、「農業生産者及びその家族・人種・コミュニティ農業元年」と銘打ち
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このたび弊社のビジネスアイディアが、パラグアイ国立アスンシオン大学(UNA)新事業創出支援
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今月に入り、米国トランプ大統領がコロンビア農産品に10%の関税を課すと発表したことが大きな
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全国コーヒー連盟(FNC)によると、コロンビアのコーヒー生産者約56万人を対象に民間企業ニ
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コロンビアの全国養鶏協会(Fenavi)が日本およびアジア太平洋地域最大の食品見本市である
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2025年3月12日INVIMA公式発表によると、バハマ食品安全農業保健局(Bahfsa)
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過去7年間において、食用ほおずきウチュバは当地の最も重要な果物としての地位を確立し、バナナ
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当地経済紙アグロネゴシオ(2025年2月26日付)によると、2025年の鶏卵生産量が190
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当地といえば畜産(年間約100万トンの牛肉生産)及び酪農大国(年間約7,000万~8,00
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当地経済紙アグロネゴシオ(2025年2月6日付)によると、世界の輸出果実市場は過去10年間
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先週のペトロ・トランプ危機は肝を冷やしました。突然在コロンビア米国領事館が「コロンビア人向
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大統領に返り咲いたドナルド・トランプ氏(任期2025年~2029年)。それに伴い、当地の畜
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コロンビアにおける労働改革と国民投票の可能性


2025年4月、当地経済紙Portafolioによるとグスタボ・ペトロ大統領は長年の課題となっていた労働法改革について、国民投票による決定を求める提案を行いました。

改革の背景、提案内容、政治的および社会的影響はどのようになるのでしょうか?

労働市場の二重構造と労働者保護の不均衡
コロンビアの労働市場は長年にわたり正規労働と非正規・非公式労働の二重構造を抱えています。国家統計庁(DANE)によると、2025年初頭の時点で労働人口の57.7%が非正規部門で就労しており、社会保障制度へのアクセス・働く権利の保護、賃金の安定などに課題を抱えています。

特に若年層や女性、地方の労働者はもっと不利な状況におかれ、短期契約やパートタイムの雇用形態が広がることで貧困や格差の固定化が懸念されてきました。こうした状況に対し、ペトロ政権は「社会正義の回復」を掲げ、包括的な労働改革を政権の柱の一つとして進めてきましたが、議会での審議は度重なる対立により停滞してきました。
今回の提案には、以下のような重要な改正項目が含まれています:

労働時間の短縮:1日8時間、週最大42時間の労働時間を厳格に守ることを規定。(←これ以上厳格になるの・・・? と個人的には疑問)

夜間労働の再定義:夜間の定義を午後6時から午前6時とし、その時間帯の労働には追加手当を義務付け。(これはすでに定着しているのでは?)

休日労働の補償強化:日曜・祝日の勤務に対しては、通常の2倍賃金を支払うことを義務化。(2倍はこれまでなかった!)

無期契約の促進:正規雇用(無期契約)を基本とし、短期契約やサービス契約の乱用を抑制。

解雇の手続き厳格化:不当解雇の抑止を目的として、解雇の際には正当な理由と詳細な手続きを求める。

これらの改正は、労働者にとっては大きな権利拡大を意味しますが、同時に企業側には人件費の増加や雇用の柔軟性低下などの負担が発生するため、経済界からは慎重な姿勢も見られます。


これまで議会においては、与野党間の対立や経済界からの反発もあり、法案の進展は困難を極めてきました。そうした状況を受けて、ペトロ大統領は憲法第376条に基づき、国民投票によって直接民意を問うという手段に踏み切ったのです。

この手続きには、まず議会の承認が必要であり、議会は提案から1か月以内に是非を判断しなければなりません。承認されれば、大統領は90日以内に国民投票を実施することが可能となります。

国民投票は、単なる法案可決の手段にとどまらず、民主主義の直接的な実現、すなわち労働者と国民による政策形成への参加を象徴する重要な制度です。しかし、その一方で、政治的分断の激化や感情的な対立を助長するリスクも併せ持っていると考えます。


この労働改革が実現すれば、労働者の生活の質の向上、労働の人間性回復といった社会的成果が期待される一方、短期的には以下のような経済的影響が懸念されます:

中小企業への負担増:夜間・休日手当の増加や雇用コストの上昇により、零細・中小企業が雇用を控える可能性。(正規雇用がむしろ減る、業務委託契約が増加する)

非公式雇用の増加:雇用規制が強化されることで、むしろ契約逃れや非正規労働が増加する懸念。

これらの課題に対応するには、単なる労働規制の強化にとどまらず、企業支援策や監督体制の整備、労働市場のトランジション支援(職業訓練、再就職支援等)との連動が不可欠であり、それが一番難しいと思います。


今回の国民投票提案は、単に労働法の技術的な改正にとどまらず、コロンビア社会の価値観と経済制度を根本から見直す試みであると言えます。

今後はまず、議会がこの提案を受け入れるか否かが焦点となります。仮に議会が拒否した場合、大統領が別の憲法的手段(署名による国民発議等)を用いる可能性も残されており、引き続き政治的駆け引きが予想されます。私は、なぜこんなにもペトロがやっきになるのか? これだけ社会格差のある国で同じ労働法ではなく、Equalityのもとにケースバイケースを残した法律起案にしてほしいと思います。

国民投票が実施された場合には、有権者の意識、特に都市部と農村部、雇用主と労働者の間の利害の相違が浮き彫りになることが想定されます。そのため、広範な国民的対話と説明責任を伴った情報発信が不可欠です。

コロンビア 2025年のペトロ政権下における伝統的コカ栽培から合法農業への転換状況及びビジネスについて

コロンビアは長年、世界最大級のコカ(コカイン原料)栽培国として知られてきました。国際社会からの強い圧力を受ける中、特にウリベ政権以降政府は撲滅政策を進めてきたものの農村部の貧困、治安問題、インフラ未整備といった複合要因により、未だ完全にコカを一掃できていません。
2025年現在、ペトロ政権は「強制的な根絶」から「合法農業への転換支援」へシフトし、生産者がいかに損をせずにコカインから米、大豆などに品種を転換させるかに重点をおいています。これによる新たな市場機会や慎重なリスク管理は何があるのでしょうか?


主なポイントとして、政府が推進する転換支援策として、
①現金支給と技術支援:コカを廃棄した農家に一時的な補助金支給と、新作物栽培に向けた技術と資材提供。
②インフラ整備:道路、貯蔵施設、灌漑設備の整備による市場アクセス改善。
③市場アクセス支援:合法作物の販売先紹介、輸出支援、ブランド化支援。
④ファイナンス:農家向け低利融資プログラム。
※対象作物はカカオ、コーヒー、アボカド、キヌア、ハーブ類(アロマティックプランツ)。国内外で成長が見込まれる品目が中心となっている。

コカから合法農業への転換は単なる社会貢献にとどまらず、ビジネス上の大きな可能性があるのでしょうか?

①新規農産品のサプライチェーン構築
未開拓市場であるため、参入競争が比較的少ない段階でサプライチェーンを構築できる。(例 スーパーフード向けキヌア・マラクジャ(パッションフルーツ)
② ESG(環境・社会・ガバナンス)投資との親和性
世界的にESG投資が拡大する中、「元違法作物地域での持続可能な農業支援プロジェクト」は投資家やバイヤーから高く評価される傾向にある。特に欧州、日本、米国市場では、こうしたストーリー性を持つ商品の引き合いが強い。
③社会的信用の向上とリスク分散
コカ依存型経済からの脱却は、農業ビジネスにとって政治的リスク(摘発、資産没収リスクなど)を低減する効果があり、中長期的な安定成長につながる。
一方で、転換支援ビジネスには生産者の生産技術不足や治安リスク(一部地域では武装勢力の影響力が残っており、事業展開に制約)、市場開拓の難しさ(品質保証やブランド構築に時間とコストがかかる)など固有の課題もあります。
これらのリスクを適切に管理するためには事業設計とパートナーシップ構築が問われます。

加えて、農業ビジネス側からみると、転換支援プロジェクトに取り組むにあたり企業側には次のような具体策が求められます。
①クラスターモデルの導入
単独農家を支援するのではなく、地域単位で栽培・加工・販売まで一貫支援する「クラスター形成型支援モデル」(効率的な資源投入と持続可能なビジネス運営のため)。

②現地パートナーとの連携強化
生産者組合、協同組合との連携。地方自治体、国際機関(USAID、UNODCなど)との協力。現地ネットワークを最大限に活用し、リスク分散とコスト効率化を図る。
③ プレミアム市場戦略
高品質・有機認証取得(例:Organic、Fair Trade、Rainforest Alliance)。「コカからの転換」というストーリーテリングによるブランド構築。

コカ栽培からの転換支援は、社会的意義が高いだけでなく、農業ビジネスにとっても成長機会となり得るプロジェクトとなります。ただし、単なる短期的な支援ではなく、社会課題の解決とビジネス成長を両立させる「インパクト型事業」の実践の時なのかもしれません。実際に当地ではコルテコヴァ(Cortecova)というビジネスがあり、武装解除兵士の社会復帰 × 縫製ビジネス(元戦闘員を雇用し、制服や作業着などの縫製工場を運営。技術訓練+精神的サポートを併用)が知られているほか、アルティソル(Artesanías de Colombia)など先住民族の伝統工芸を世界市場向けにプロデュースしている活動もあります。貧困、暴力といった社会課題に対して「課題解決そのものを競争優位に変える」ビジネスが今後も増えてくると推測されます。

2025年コロンビア政府の農業金融政策 ~中小農業経営者の信用強化とアグリビジネス成長戦略が鍵~

コロンビア政府は2025年、「農業生産者及びその家族・人種・コミュニティ農業元年」と銘打ち、農業部門への戦略的投資を加速させる新政策を発表しています。最大430億ペソ(約11億米ドル)のスキームで構成され、主に小規模・中規模農家への金融アクセス拡大と農業保険制度の強化が柱。その内容をレポートします。

コロンビア国内総生産(GDP)に占める農業部門の割合は10.2%(2024年)、成長率は8.1%となり、今後もアグリビジネスは国内経済を牽引することを期待されています。今回の政策は、その持続的成長のための制度構築の一つです。

主な政策構成をみましょう。

  1. 農業向け開発クレジット(最大300億ペソ)
    対象:小規模農家、女性・若者農業者、先住民族、コミュニティ経営の農業生産者連盟

資金用途:農業機械、灌漑設備、ポストハーベスト処理施設、スマート農業導入

※無担保型・低金利ローン制度の導入、よりゆるやかな審査基準の展開。ビジネスインサイト:農機・ICT農業ソリューション、再生可能エネルギー(ソーラー灌漑)導入事業者にとっては、中小農家とのB2B提携のチャンスが拡大。

  1. 農業保険制度の整備(80億ペソ)
    対象:天候リスク・疫病リスクへの備えとしての作物保険・収入補償保険

政府による保険料補助制度の導入(保険加入率向上が狙い)

※ビジネスインサイト:気候変動リスクに対応したアグリテック保険ソリューション(例:AIによる作物損害予測、衛星データ連動保険)の市場創出が見込まれる。

  1. 能力開発と金融リテラシー支援(50億ペソ)
    金融教育、農業経営研修、地域技術アドバイザーの派遣

民間金融機関との連携による普及推進

※ビジネスインサイト:金融教育や営農研修のアウトソーシング先として、日本・海外の教育系企業、農業コンサル、NGOの参入余地がある。

  1. 農業物流・インフラ整備
    地方道路整備、倉庫・流通センターへの投資

生産物のサプライチェーン最適化を促進

※ビジネスインサイト:アグリロジスティクス企業、冷蔵インフラ関連事業者との官民連携モデルに期待。特に遠隔地から都市部への高付加価値農産物流通が注目される。

戦略的意義と民間セクターへの期待
本政策は単なる補助金施策にとどまらず、「信用インフラの整備」や「市場参入の平等化」といった制度改革の色合いが濃い。政策のコアには、「持続可能な農業成長のための投資先としての農村」が据えられており、これは国内投資家に加え、国際的なアグリビジネス企業や開発機関にとっても重要なシグナルとなります。

とりわけ女性・若者・先住民族といったこれまで金融機会に恵まれなかった層が政策的に支援対象として明示されている点は、インパクト投資や社会的インクルージョンを志向する投資家との親和性が高いといえます。

結論として、コロンビア農業市場の再評価を求める声が強くなるでしょう。
2025年の新政策は単なる農業活性化ではなく、金融包括・リスクマネジメント・技術革新という複数の成長軸を内包した包括的な成長戦略となりそうです。農村がリスク資産ではなく、成長可能性のある投資先として再評価される転換点となる可能性が高いでしょう。

特に中南米市場に展開する企業や、途上国市場への進出を模索する日系アグリ企業にとっては、政策的な後押しと市場拡張の両面で参入好機と言えるかもしれません。

AKARI SAS×パラグアイ スマート農業案件キックオフへ INCUNA プレインキュベーションプログラム採択に関して

このたび弊社のビジネスアイディアが、パラグアイ国立アスンシオン大学(UNA)新事業創出支援局(INCUNA)**による「プレ・インキュベーション・プログラム」に採択されました。

現在、INCUNAには約50組の起業家が登録されており、弊社もその一員としてビジネスモデルのブラッシュアップと事業化に向けた準備を進めております。

パラグアイの魅力とビジネス環境
パラグアイは、以下のような特徴から、南米における戦略的な投資先として注目されています。

①法人税率の低さ(南米でトップクラスの低さである10%)。
②豊富な水力発電資源による低エネルギーコスト
③周辺国と比べて抑えられた人件費​: 2025年現在2,798,309グアラニー(約370米ドル)
④メルコスール(南米南部共同市場)加盟による、ブラジル・アルゼンチンなどへのアクセス
⑤外資企業への優遇措置や安定したマクロ経済

また今でも日パラグアイ移民協定が生きており(永住権がとりやすい)、人の交流という観点でもポテンシャルの高い国です。

これらの優位性を活かし、弊社はコロンビア・エクアドルなどでの南米ビジネス支援の経験をもとにパラグアイでも地域経済とグローバルビジネスの両立を目指す「Win-Winのスマート農業ビジネスモデル」を構築していきます。

スマート農業 × 加工技術 × 人材育成

パラグアイの農村には、まだ十分に活かされていない可能性があふれています。
たとえば、地域で多く生産される米。主食としての消費が限られるなかで、余剰在庫が出てしまうこともしばしば。
しかしこの米は、日本の技術と組み合わせることで、コメ加工品として新たな命を吹き込むことができます。

「ただの食材」ではなく、「地域の資源」として。
「農業従事者」ではなく、「起業家・職人・挑戦者」として。
私たちはこのプロジェクトを、そんな人と土地の可能性を開く挑戦だと考えています。

  1. スマート農業の導入
    ドローンによるモニタリング、気象・土壌センサー、デジタル営農記録など、
    パラグアイの中小規模農家でも導入可能な適正技術を段階的に取り入れ、農業の効率化と収益性を高めます。
  2. 米粉を軸とした加工・商品開発
    余剰米から作る米粉を原料に、地元の女性グループや若者たちと一緒に、パン・焼き菓子・麺類などの新商品を開発。
    学校給食や観光地向けの販売を通じて、地域の“食”をブランド化します。
  3. 技術移転と人材育成
    日本での研修を通じて製粉・加工技術を学び、現地で実践に落とし込む。
    単なる“教える・教わる”関係ではなく、地域の若者が主体的に地域を変えていく力を育てる。

“人にやさしい農業”の在り方を、パラグアイの地で実現し、南米全体に広げていくことを目指しています。

ご関心のある皆さまへ(個人様・法人)
私たちは、農業と食にまつわる課題解決に挑む多くの仲間を求めています。
パラグアイを起点に、南米の農業というキーワードでコラボレーションしませんか?

ぜひお気軽に、お問い合わせください。

米国トランプ政権による10%関税がコロンビアのアボカド輸出に与える影響

今月に入り、米国トランプ大統領がコロンビア農産品に10%の関税を課すと発表したことが大きな余波をよんでいます。その中で最も影響を受ける品目として挙げられるハスアボカドは、国内アボカド連盟コルポアス(Corpohass)ベルヘル代表は木曜日、この措置はコロンビア産の競争力に直接影響すると警告しており、特にコロンビア、ペルー、その他のアボカド輸出国が10%の関税を受けるのに対しメキシコが対象外とされたことに強い不公平感を表明。確かに、当地のアボカド輸出の50%は米国向けであり、欧州での市場開拓が困難が増す中重要な顧客となっています(アボカド産業は現に約7万9,000人の正規雇用を生み出し、17県250市町村で24万人以上の人々の収入源でもある)。


加えて懸念されるのは、ハス・アボカドがコロンビア農業で最も稼ぎが大きいということです。DANEによると2024年の市場売上は3億ドルを超え、2023年比54.3%増となりました(主な生産地アンティオキア県、リサラルダ県、バジェ・デル・カウカ県。特に後者は、中国を主な売り先とし2023年の1,700万米ドルに対し2024年には5,000万米ドルの売上を達成。つまり1年間で輸出額をほぼ3倍に伸ばした恰好。アンティオキア県も2023年~2024年の間に42.1%の伸びを示し、輸出額が8,310万ドルから1億1810万ドルに増加)。


現在、コロンビア産アボカドは米国市場で約3〜4%のシェア(メキシコが約90%)に過ぎず、メキシコが関税ゼロの特別措置がとられている限り、10%関税を課せられているコロンビアは不利な状況におかれます。またその関税分を一体誰が負担するのか? という点も見過ごせず、関税10%を輸入業者が負担しない場合輸出業者や生産者がコストを吸収することになり、利益が減少。


もしくは米国向け輸出が減れば、コロンビア国内市場や他の輸出先(欧州、アジア)に頼る必要が出てくるでしょう。
コロンビアはこれから、価格競争力の低下、輸出量の減少、生産者の利益圧迫といったリスクに見舞われます。長期的対策として米国向け以外の市場開拓はいう間でもなく、FTAを活用した関税ゼロの市場へのシフト、ブランド価値向上(オーガニック、プレミアム戦略)の戦略をとる必要があると思います。

コロンビア コーヒー市場に特化した包括的な学習を提供するeラーニングが全土でキックオフ そのメリットとデメリットは?

全国コーヒー連盟(FNC)によると、コロンビアのコーヒー生産者約56万人を対象に民間企業ニトロファート社がeラーニングプラットフォーム「El Camino del Café」を開発しました。これは無料でデジタルマーケティング、ブランディング、施肥、品質管理、経営などの専門知識を提供し、生産から営農までを支援する仕組みです。伝統的な農法と最新技術を融合し、続けやすいコーヒー生産の発展を目指す新しい取り組みです。


これまでのコーヒー生産農家の課題として、圃場から携帯電話やインターネットを通じアクセスの脆弱性や、実践的な知識を欠乏、生産性向上や市場競争力の強化が挙げられていました。今回ローンチした本プロジェクトのトレーニング・モデルは、生産者が常に質の高いプログラムにアクセスできることが売りで、農法テクニックの向上にとどまらず営農分野の強化も目した取り組みです。加えて現在コロンビア全土では75.7%がインターネットにアクセス可能な環境にあり、コーヒー生産者が日々の意思決定を容易に収穫や商品化プロセスを最適化し、高付加価値コーヒーの売り先確保や顧客とのやりとりにも活用することを見据えています。


このeラーニングシステムにアクセスするには、利用者(生産者)はリンクから自分のプロフィールを作成し、そこから特定のコースをリクエストしたり、他のユーザーと共有する独自のコンテンツを作成できます。


水はけのいい、山道に多いコーヒー農園。確かに移動費も宿泊費もかからずに農法テクニックが身に着くのは便利でしょう。忙しい収穫期を避けて学習できるのも魅力的。他の生産者や専門家とオンラインでつながることで、新たなビジネスチャンスが生まれることもあると思います。ただ一つ懸念するのは生産者側のモチベーション。無料であるがゆえに、継続的に学習を進める意欲がないと、途中で学ぶのをやめてしまうことも。また土壌管理や加工技術は、実際に手を動かさないととても習得は難しい。オンラインで知り合った生産者と、対面でのワークショップやフィールドトレーニングに参加するなどハイブリッドなコースをもうけてもいいのでは、と考察します。

速報 日本がコロンビア産鶏肉の輸入を正式に解禁へ

コロンビアの全国養鶏協会(Fenavi)が日本およびアジア太平洋地域最大の食品見本市であるFoodexに参加している中で行われたこの発表によると、1月21日付で日本に送付された衛生要件に関する必要書類が日本側に承認されコロンビア産鶏肉の日本市場への輸出が本格化することが分かった。昨年12月26日に鳥インフルエンザによる輸入制限期間が90日から28日に短縮されるなど、衛生に特化した外交が実を結んだこととなる。コルドバ 在日大使は、日本当局との交渉で重要な役割を果たし、コロンビアの養鶏業界は国際市場での地位を強化し、日本との新たな商機を開くことへの率直な期待を述べた。


日本は現在、ブラジルやタイなどから鶏肉を輸入しているものの新たにコロンビア産が加わることで選択肢が広がります。これにより当地農産物が日本市場に受け入れられれば、他の農産品(牛肉や加工食品など)の輸出拡大につながる可能性がある。コロンビア経済にもプラスの影響となるとみられます。


当地では近年、一部の生産者が放し飼い(フリーレンジ)やオーガニック飼育に取り組んでおり、プレミアム市場向けの商品も増えています(生食前提ではないものの、一部ではそのまま卵かけごはんにしている強者もいるとか)。

労働コストや土地代がブラジルや米国と比べて安いため価格競争力では優位なほか、日本市場向け輸出に向けて、抗生物質や成長ホルモンを抑えた生産も進められています。味もくせがないため、親子丼や水炊きなど、和食の煮込み料理には最適。今後の日本の消費者の反応が楽しみです!

コロンビアからバハマへの鶏肉輸出が正式承認へ

2025年3月12日INVIMA公式発表によると、バハマ食品安全農業保健局(Bahfsa)がコロンビア産の鶏肉および食用肉製品に関する衛生協定が合意に達し、対バハマ向け輸出が承認されたことがわかった。


カリブ海に浮かぶバハマ諸島は2022年時点で人口約41万人と決して豊富な胃袋があるわけではく、食料の多くを米国をはじめとする近隣諸国からの輸入に頼っている。今回、コロンビアの鶏肉の新たな売り先となったことは、コロンビア側にとって以下のメリットがある。


①カリブ市場への足掛かりとなり、他のカリブ諸国(ジャマイカ、ドミニカ共和国など)への輸出拡大が期待できる。
②地理的利便性を活用して米国やブラジルなどの大手輸出国よりも短い距離で供給できる。
③鶏肉の安定供給先としての可能性があり、外貨獲得には魅力的。


INVIMAは「バハマがコロンビア産鶏肉が衛生条件を満たしていると評価してくれたことが大きい」と率直にコメント。今後、同市場に直接アクセスすることができることを強調した。ただし、生産における家禽衛生管理と、加工における安全管理を含む衛生要件(疾病管理、HACCP等)を遵守しなければならない。加えて現在バハマは主に米国やブラジルから鶏肉を輸入しており、それらと競争するための価格・品質戦略が必要となるだろう。カリブ市場は今後の成長機会になり得ると推測する。

最後に、コロンビアが衛生協定を締結した国は95か国にのぼり(INVIMA)、国際的にみると中規模以上の輸出国に匹敵する(例 ブラジルは世界最大の鶏肉輸出国で約160か国以上と衛生協定を締結。米国は同約120か国)。

コロンビアのウチュバ輸出が初めて4,000万米ドルを突破

過去7年間において、食用ほおずきウチュバは当地の最も重要な果物としての地位を確立し、バナナ、アボカド、タヒチライム、パッションフルーツと並び、2024年数量ベースでの輸出量トップ5に入ったことがわかりました。

当地経済紙アグロネゴシオ(2025年3月7日付)によると、2024年ウチュバの輸出額が初めて4,000万米ドルを超え、累計4,350万米ドルに達しました。前年比約9.4%増となり、ここ数年のウチュバの輸出拡大傾向が続いていることを裏付けています(DIANおよびAnaldexの分析)。ちなみに同作物は2017年には2,780万米ドルの輸出額を記録、それ以降も成長を続けた結果2024年の4000万ドル超えとなりました。


主要な売り先をみると、主に欧州と北米です。中でもオランダは最大の輸入国であり、輸出額は2,550万米ドル(全体の58.7%)。次いで米国が660万米ドル(15.3%)、ドイツが350万米ドル(8%)、ベルギーが160万米ドル(3.7%)、カナダが140万米ドル(3.4%)と続きます。特にドイツとイギリスでは需要の大幅な増加が見られ、それぞれ70.3%、113.2%の成長率を記録しました。オランダも前年比2.1%の増加にとどまったものの、引き続きコロンビア産ウチュバの最大輸入国となっています。

ウチュバは国際市場で魅力的な商品であるだけでなく、コロンビアにとって大きな経済的・社会的な機会を提供する作物でもあります。2024年の時点で、コロンビアは世界のウチュバ生産量の94%を占めており、2.7%のペルーや2.9%のエクアドルを大きく上回っています。

主要な生産地域はボゴタ、クンディナマルカ、アンティオキア、ボヤカ、カルダスであり、ナリーニョも重要な輸出拠点の1つとなっています。地場企業には、Frutireyes S.A.S.、Colombia Paradise S.A.S.、Frutas Comerciales S.A.、Comercializadora Internacional Caribbean Exotics S.A.S.、Novacampo S.A.S.などがあります。Analdexのウチュバ輸出委員会ディレクターであるカルロス・ロサノ氏は、ウチュバの成功は偶然ではなく、毎年約10%の堅実な成長を続けた結果」と評価しています。
また、ウチュバは商業的なポテンシャルだけでなく、高い栄養価でも注目されています。最近の研究(European Journal of Nutrition, MDPI – Nutrients)によると、ウチュバにはインスリン代謝を改善する効果があり、糖尿病予防の助けとなる可能性が示されています。

加えてウチュバの生産には多くの人々が関わっており、その収穫・選別作業には大きな労働力が必要です。2024年には8,000トン以上のウチュバが検査対象となり、厳密な品質管理が求められます。この作業には多くの女性(特にシングルマザー)が従事しており、クンディナマルカ、ボヤカ、アンティオキア、ナリーニョの各地域で重要な雇用機会を生んでいます。


ウチュバの成長は続いていますが、さらなる国際市場での認知向上が課題といえます。ロサノ氏は、「ウチュバの栄養価や機能性、料理での多用途性をもっと広めていくことが必要です。それが年間輸出成長率10%超えという目標を達成するための鍵となります」と指摘。
需要の増加と業界の成長を背景に、コロンビア産ウチュバは今後さらにグローバル市場での存在感を高める果物として期待されています。この動きは、コロンビアの農業に新たな可能性をもたらし、国際市場での競争力をさらに強化するものと思われます。

コロンビア 2025年の鶏卵生産量は世界第10位の190億個に達する見込み 

当地経済紙アグロネゴシオ(2025年2月26日付)によると、2025年の鶏卵生産量が190億個を超え、2023年の168億6400万個、2024年の180億個を大幅に上回る史上最高の生産量となった。


その背景として、2024年にはコロンビア一人当たりの卵消費量が史上最高の343個となり、メキシコの380個に次いで世界第2位となったことも大きい。また、これまで米国からの輸入に依存していたカリブ海の小国(アルバ、バハマ等)への輸出が伸びている。同様に、鳥インフルエンザをめぐるアメリカの状況も近隣国から注視されており、ここ数年で合計1億5000万羽が殺処分され鶏卵の供給が減少している(そのため最終小売価格が1ダースが8ドルと高騰中)。輸出が開かれれば、月産1億5000万個以上の卵が輸出用に出荷される予定だ。

国内第2位の生産量を誇る鶏卵会社Huevos Santa Anita社のルイス・フェルナンド・タスコン・ゼネラルマネージャーによると、2024年の同業界の好業績の主な要因はロシアとウクライナ情勢により2022年に大幅に上昇した原材料価格の是正であった。2025年は2024年比で5%から6%の成長を見込んでおり、一人当たりの消費量は364個、つまり一人一日当たりほぼ卵1個の消費になるとみられる。
今後輸出を継続するためには、①安定した生産能力(飼料・飼育環境の管理)、②季節変動に左右されない出荷体制、③物流面での管理(温度管理、鮮度保持、トレーサビリティ)が不可欠となる。

コロンビア・ワユ族が漁獲するグアヒーラ産のロブスター輸出の現状と課題

当地といえば畜産(年間約100万トンの牛肉生産)及び酪農大国(年間約7,000万~8,000万リットルの牛乳生産)で知られ、いずれも国内の重要な産業として輸出の拡大も進められている。それでも、まだ漁業の可能性は知られていない…。もともと日常的に新鮮な魚を食べる食習慣がない上、漁獲技術も追いついていないのが現状。そんな中、国内コロンビアの最北端に位置するグアヒラ県(県都・リオアチャ)でロブスターの輸出に取り組む動きがみられている。

カリブ海に接する同県では、年間を通じて乾燥した亜熱帯気候を生かし(砂漠あり)、さまざまな海の食材に恵まれている。そして先住民が多く住んでおり、特に沿岸のそばで生活しているのはワユ族だ。彼らは、コロンビアとベネズエラの国境であるグアヒラに住む最大の先住民族であり、国境を自由に超えて活動する約50万人の先住民である(公用語 ワユー語)。

グアヒラのロブスタープロジェクトはビタエ・サヌ・コロンビア社(創業約5年。シーフード輸出に着手したベンチャー)はじめ民間企業が中心となっているが、彼らのビジネスパートナーとして欠かせないのが実際に漁獲するワユー族であるという。ワユー族の獲ったロブスターを、9人で構成された民間企業のチームが国際基準に適合させるため、製品の品質を保証しながらも下処理、冷凍、包装の工程を踏んでいるそうだ。実際に初のコロンビア産ロブスターとして、カナダや米国向け輸出を2024年から開始。ビジネスでありながらワユー族コミュニティを守る活動も並行して実施しており、Win-Winの経済活動になるという。


ロブスター生産工場は県都リオアチャにあり、現在毎日約300キロのロブスターが加工され、約500キロが2週間毎にカナダのモントリオールとアメリカのマイアミに輸出されている。


最大の課題は、コロンビア国内に資材がないことである。ロブスターを運搬できる冷蔵用資材はマイアミから輸入しており、より安価で扱いやすい運搬資材のニーズは日々増大している。また長期的にはグアヒラ産ロブスターを養殖する動きも始まっており、フランス人講師を招いて研修も行ったという(同社)。


国内の販売はこれからで、高所得者やシーフード愛好家の多いボゴタ・メデジン向けに国内市場に参入する。これが好評ならばロブスター以外にもマダイやスズキなどにも展開させたい意向だ。


コロンビアではまだ新鮮なシーフードを食べる食習慣が諸外国に比べて育っておらず、国内市場より先に輸出品として漁獲されるようになった。今後は国内で愛好家をつくる活動とともに、ワユー族と協力してサステナブルな漁業のためのMSC認証(持続可能な漁業認証)やヴィーガン向けシーフード代替品などの新たな分野開拓が求められるかもしれない。

コロンビア 世界の生鮮果実輸出市場における最新ポジションと次なる一手は

当地経済紙アグロネゴシオ(2025年2月6日付)によると、世界の輸出果実市場は過去10年間世界的に成長が続いていることがわかった。2018年から2023年の年間平均成長率(CAGR)は3.4%で、減少を見せたのは2015年の-1.3%と2022年の-5%の2年にとどまっている(異常気象が原因とみられる)。


世界的にも、またコロンビアにとっても輸出量ベースでの主要作物はバナナである。しかし、売り先の欧州各国では小売店が最終販売価格を低く抑えようとする動きを見せており、金額ベースでの成長は鈍化している。コロンビアの生鮮果実輸出においてバナナは最大のシェアを占めているが(主な生産地アンティオキア県)、2023年にはエクアドルが全体の27%のシェアを占め第一位。次点でフィリピンの構成比10%、コスタリカの9%、コロンビアの9%、グアテマラの8%がこれに続く。


一方、2018年~2023年にかけて最も高い伸び率を示した輸出果物はブルーベリー、みかん、アボカド、マンゴーであった。現在、コロンビアはアボカド、ライム、ブルーベリー、マンゴーで顕著な伸びを示し輸出作物の多様化に着手したことは注目に値するが、バナナは依然として輸出作物の第一位にとどまっている。


一方、柑橘類輸出市場では中南米の存在感はまだ限定的で、スペインが24%でトップ、南アフリカが12%、中国が7%、トルコが6%、エジプトが6%、メキシコが6%とコロンビアはじめ他の中南米諸国が入り込む余地はほとんどない。これらの果物だけでなくその他についても、生鮮果物の主な輸入市場は依然として北半球の米国、英国、カナダ、中国、ロシアなどに集中している。

しかし、輸出のチャンスは生鮮果実だけではなく加工品をみよう。ブラジルは果実の加工において競争優位性を見出し、2023年には約30億ドルの加工果実と缶詰を輸出した(CAGR発表)。

コロンビアは生鮮市場で規格外となった果実の加工に付加価値をつける方針を定めており、規格外果実を選別するための機械の需要が高まっている。高性能カメラやAI画像認識を活用して果実の形、大きさ、色ムラ、傷を判別できる光学選別機等の参入が待たれる。

コロンビアのコーヒー国際価格が4日連続で過去最高記録更新

先週のペトロ・トランプ危機は肝を冷やしました。突然在コロンビア米国領事館が「コロンビア人向けの査証発給業務を停止する」と発表した深夜、不法移民受け入れ航空機を拒否したことが発端であるとわかり、周囲のコロンビア人も動揺を隠せない様子。

米国に上陸したコロンビア人航空機の検査も厳格化するというし、我が家にもコロンビア人がいるので他人事ではない。またコロンビア産の品目関税を25%上乗せすると追加情報が入り、あっさりとペトロは大統領専用機で自国民を迎えに行く旨公表・・・。わずか9時間でのお騒がせ事案でしたが、南米きっての親米国コロンビアであっても、これまでの大統領がそれだけ苦労して友好関係を築いても、トランプ氏には一切関係ないのだと実感しました。そしてトランプ氏の采配によって右往左往する南米諸国・・・。個人的には、移送されるのは「不法」移民に限定しているし、自国から違法に滞在する外国人を放逐するのか法治国家として当然と考えますが、そのスピード感には驚くばかり。そして、出生地主義が廃止される旨を受け、妊娠中期の外国人女性(違法滞在)が「帝王切開で早く子どもを産めないか」と相談しているニュースを聞いて、暗い気持ちになりました。

さて、本題です。世界で流通する一般的なコモディティコーヒーの国際市場価格は需要と供給を踏まえて決まり、コロンビアで栽培するアラビカ種はニューヨーク商品取引所で決定されますが、1/30木曜日の終値は3.73ドルで、上昇傾向を示していることが分かりました(当地経済紙アグロネゴシオ2025年1月30日付)。前日1/29水曜日の終値は3.66ドルで、ここ数日と同様に史上最高値を記録。1/28は3.57ドルと上昇傾向で推移している。
トランプとペトロの危機の翌日もそれは変わりませんでした。
トレーダーによるとブラジルの現在のアラビカ種の収穫量のうち70~80%は売却済みで、新規取引は低調だといいます(ブラジルは世界のアラビカ豆の約半分を生産しており、一般的に焙煎や挽き割りブレンドに使用される高品質の品種とされる)。
同国は昨年の大干ばつの後気候はおおむね安定しており、ブラジル食糧供給機関であるコナブによれば、次回の収穫量は今回より4.4%少なくなる見込(ブラジル産コーヒー豆の国際価格は先週、3.47ドル・3.43ドル・3.41ドル3.27ドルで取引)。

コロンビアコーヒー豆にとって追い風となっている価格上昇ですが、2024年金額ベースで160億ペソの売り上げとなり、コロンビアのGDP全体の約1%、農業部門GDPの23%以上に貢献します。ブラジルと比較すると、同国では収穫量は5,470万袋強に達したが、前年比0.5%減少したのに対し、コロンビアでは収穫量ベースで23%増加していることも注目されています。


ただ、今回の外交・貿易危機を受けてFNC(全国コーヒー生産者連盟)は声明を発表しています。1927年以来米国市場とコーヒーを通じた友好関係を築き、コロンビアブランドであるカフェ・デ・コロンビアが米国で浸透してきたこと。現在コロンビアコーヒーの輸出量の約40%を米国が占めており、この市場での競争力を失うことの影響が多大であること。


55万6,000世帯のコーヒー生産者を代表して、コロンビア政府に対し、米国との貿易関係を優先するよう、また今回のような危機を引き起こす前に、コーヒー連盟が独自の外交ルートを構築する必要性を求めています。
今回、コロンビア・米国間の緊張は一時的に緩和されたものの両大統領の関係が完全に回復するかどうかは不透明です。米国はじめ主要な売り先に依存せず、貿易協定を活用し、関税の低い新興市場への進出を促進することが賢明と思われます。

米国トランプ大統領就任による保護主義政策によって、コロンビアの畜産業はどう変化するか?

大統領に返り咲いたドナルド・トランプ氏(任期2025年~2029年)。それに伴い、当地の畜産業では期待と懸念の声が大きくなっています。個人的には保護貿易を中心とするトランプ氏の方針を楽観視するコロンビア政府(可能性以外何物でもないと明言したアグロ経済紙アグロネゴシオ2025年1月23日木曜日付)は、当地の食肉の売り先の有望株は中国であり、米国向けはたいした影響はないというスタンスであるものの、では酪農部門はどうなのか? 親米路線は変わらないのか? 政府発表資料等をもとにいくつかポイントをまとめました。


①米国とのFTA変更可能性
2011年に発効した米国・コロンビアのFTA修正の可能性はほぼない。第一次トランプ政権のときに手つかずであり、コロンビアが米国と再交渉を望むのは悪手ともいえる。
②畜産部門が輸出を制限される可能性
現時点で当地は米国向けに牛肉を輸出していないものの、コロンビア産牛肉を米国市場に参入するための衛生要件は満たしている状況。トランプ政権によって、一気に交渉が進む可能性もある。現在米国向け生乳と乳製品の輸入規模は数量ベースで約2,000トン(2023年)で非常に少ないものの、これも増加する可能性はある。

③トランプ政権下で実施される可能性のある保護主義政策によって、コロンビアの畜産物に特別なリスクはあるか?
食肉に関しては輸出していないので、関税マターはない。しかし、コロンビア向けに生乳を輸出している米国輸出業者に対して何らかの措置が取られた場合、米国が報復としてコロンビア産食肉の輸入解禁交渉を中断する可能性はある(しかし、公正な貿易の枠組みからすれば、コロンビアが米国産生乳やその加工品のお得意様であることは変わりなく、畜産をカードに交渉の場をぐらつかせることは考えにくい)。
④トランプ大統領は、コロンビア畜産に商機をもたらすか?
衛生要件を満たしている上に、米国にとっても食肉が安く手に入ることはメリットである。また当地にとっても、地理的な近さとアメリカ市場の人口や胃袋、ニーズはビジネスチャンスとなる。米国市場への食肉参入が具体的に認められるかどうかは、外交および貿易関係における今後4年間の努力による。


トランプ政権下での政策変化は、コロンビアの畜産にとって両刃の剣となり得るかもしれない。アメリカが輸入関税を増加させた場合コロンビア産製品の価格競争力が下がるリスクがある一方、アメリカ国内での畜産需要が高まり生産コストが上昇した場合、コロンビア産の製品が代替として選ばれる可能性もあります。
コロンビア国内の規制対応能力を強化することが鍵となりそうです。