Topics一覧

メキシコ、ペルー、チリ、アメリカ、ケニア、ニュージーランドが主な産地として知られるハスアボ
Read more
遅くなりましたが、2025年もAKARI SASどうぞよろしくお願いいたします!12月に仕
Read more
2024年12月8日付当地経済紙アグロネゴシオによると、昨今問題視されているタマネギ危機の
Read more
FNC(全国コーヒー生産者連盟)によると、コロンビアでは84万5,000ヘクタールがコーヒ
Read more
ようやくCOP16も終わり、11月24日にはメトロポリタン都市計画の地方選挙が終われば今年
Read more
2023年3月にボリビアのガブリエル・レネ・モレノ自治大学(UAGRM)において、JICA
Read more
2024年11月1日、約2週間のCOP16が閉幕しました! 結局、先進国の資金拠出の具体的
Read more
そろそろ雨季に入る頃ですが、気温35度が続くカリ。それでも普段より暑く感じるのは熱気のせい
Read more
一度当地に来たことのある人なら、麦茶によく似た甘い飲み物(アグアパネラ)を口にした経験があ
Read more
コロンビア農牧院(ICA)の公式発表(2024年10月13日付)によると、今年4月以降鳥イ
Read more
あっという間に10月に入りました!  この一週間はコロンビア全土で秋休み。元気ありあまる子
Read more
日本では令和のコメ騒動がやっと落ち着いた頃と思いますが、こちらコロンビアでは2030年の米
Read more
南米きっての親米派、コロンビア。そのイメージでみると意外ですが、反米の外交路線をとるイラン
Read more
パーム油の主要な産出国は主に熱帯地域に位置しています。例えばインドネシア (世界最大のパー
Read more

2024年1月-9月間 コロンビアでハスアボカドの輸出が15%増加。そのからくりとは?

メキシコ、ペルー、チリ、アメリカ、ケニア、ニュージーランドが主な産地として知られるハスアボカド(小ぶりで黒っぽいゴツゴツした品種)。中国や日本向けに冷凍アボカドの需要が増していることもあり(おそらくワカモレなどの多国籍料理普及の関係か?)、コロンビアもその波にのっています。


11月のアボカド連盟(Corpohass)発表によると、前年1月-9月間の輸出は前年同期比15.77%増を記録。これは、当地アボカドセクターの過去20年間で最も高い伸びとなりました。詳しい内訳としては同期間で10万2,376トンのハス・アボカドが輸出され、金額ベース2億1,860万ドルの規模となっています(前年比42%増)。2023年の輸出量計11万4,535トンは軽く超える、2024年12月末には数量ベース14万7000トン(前年比16%増)の輸出量達成が確実視。


アボカド輸出の好調なからくりとして、コロンビアの場合は①新しい売り先(新興国輸出し向け国)を確保できたこと、②機械の導入などの生産性向上、③長雨にならず、気候が味方したことが大きく、ラッキーな一年だったといえましょう。ちなみに国内の栽培面積は3万2,132ヘクタールで、そのうち1万2,208ヘクタールがアンティオキア県、6,956ヘクタールがカルダス県、4,966ヘクタールがバジェ・デル・カウカ県というバランス(ICA統計)


輸出先をみると、主な消費国は欧州連合(EU)です。1月~9月までに40フィートコンテナ1,182 TEU、7万4,533トンが出荷。国別にみるとオランダが第一位の輸出仕向け国であり、計4万4,288トンの大きな取引先。米国市場にとって、コロンビアは第5位の供給国にとどまっています(数量ベース2万3,964トン)。アジアをみると日本が大きな相手国であり、アジア向け全体の2,849トンのうち2,376トンが対日本。今後も存在感を増すでしょう。


アボカドは当地農業部門GDPの約5%を占める品目。ただ問題点として、水を大量に消費することによる環境負荷が指摘されています。持続可能な農業技術や効率的な灌漑方法の導入など、輸入するだけでない日本のプレゼンスも、今後必要となるかもしれません。

日本のゴム長靴がコロンビアで人気の理由

遅くなりましたが、2025年もAKARI SASどうぞよろしくお願いいたします!
12月に仕事納めのご挨拶をし、年明け二週目には新年の仕事始めを…という計画でしたが思いっきりずれ込みました。

というのも昨年は妊娠したものの臨月前日まで業務があり、やっと終わった、産休! と喜んだのもつかの間12月中旬の出産予定が少し早く生まれてきました(本当に予定日ってあてにならない! やっと穏やかな産休を過ごせると思ったのも約10日でジエンド・・・)。もちろんコロンビアで出産しましたが、緊急で夜中の2時20分に病院に駆け込み、フライングで帰されるかなぁと思いきや(三番目の余裕か)「うん、全開! ハイ、じゃあ自分のペースで産んでね」という感じで、ほんっとーに看護師さん誰一人腰もさすってくれなかった・・・。それはきっと彼女達の仕事ではないのですね。無痛分娩を希望していたけど、麻酔科医が手が空いていない、空いていたとしてももう間に合わないと言われ初めて普通分娩で産みました。当たり前のように24時間で帰され、そこから冬休みの上の子2人とあわせて計3人の育児育児育児・・・。今日やっと学校が始まり、私も少しずつ床上げしています。

さすがにビジネスニュースを読み込めるところまでは回復していないので、新年一発目は昨年携わったゴム長靴の対コロンビア輸出の件。
皆さんご存じですか? コロンビアの農家さんが一番欲しがっている日本の商品は間違いなくゴム長靴ということを・・・!
なぜかというと、軽量で柔軟性がありたためるというメリット、加えて長時間の着用でも疲れにくい素材が使われていること。その耐久性と防水性の高さ。これまでにも細々と長靴を入れてくれないとの相談がありましたが、今回はオフィシャルにカリ市の国際農業センター(CIAT)よりいっぺんに性能のいいゴム長靴がほしいとの相談がありました。
一口に長靴といっても幅がありますが、今回は広島県にあるマルカツ様とコンタクトをとり、昨年10月コロンビア向けに40足商談が成立しました。


https://www.marukatsu-eco.co.jp/


日本だからいいというわけではないですが、コンパクトに折りたためて長く使えるゴム長靴は一度履いたらもう他の物には戻れない。次回以降は女性向けに手袋など、あらゆるニーズで日本とコロンビアをつなげていけたらと思います!
今年は赤ん坊を抱えて、三人の母としてどこまでできるか挑戦ですが夏には一時帰国も控えているし、種まきの一年となればと思っています。どうぞよろしくお願いいたします!

コロンビアの玉ねぎ業界が抱える問題とは? 政府が解決策発表

2024年12月8日付当地経済紙アグロネゴシオによると、昨今問題視されているタマネギ危機の影響を緩和するための対策について、政府が具体的な解決策に着手したことが分かった。


現時点で生産者が話し合いの焦点に挙げていることは、①密輸、②不公正な国際貿易慣行、③市場価格の低迷である。加えて低価格の輸入玉ねぎと競争しなければならない状況におかれていること、農地から市場までの物流インフラが整備されていない地域が多く、収穫した玉ねぎが輸送中に損傷を受けたり品質が劣化することがあること(販売価格が低下)等多岐にわたっていた。


これをうけ、農業開発省と商工観光省はDIAN, ICA, ADRなどの関係当局と連携し、たまねぎ生産者に対する補助金を含む保証の設定に入った。それにはマネーロンダリングをはじめとする不正の改善も含まれます(玉ねぎのような農産物は多くの場合、取引の記録が曖昧になりがちで、現金取引が一般的となりがち。不正資金を合法資金と見せかけるための隠れ蓑に使われることが多い)。今後防止策として、コロンビア政府はたまねぎ業界に対して玉ねぎの流通経路や価格設定の透明性を確保し、不正行為を監視する仕組みを構築するほか、農産物取引に関する記録や報告を義務化し、虚偽の申告を厳しく取り締まります。


加えて、カルバハリノ農業開発相は、農業銀行とともに玉ねぎ生産者を対象とした融資の拡大を表明し、生産者は効率的な栽培技術や現代的な設備を導入するための資金に充てることができます。

コロンビアのコーヒー殻の最新再利用方法とは?

FNC(全国コーヒー生産者連盟)によると、コロンビアでは84万5,000ヘクタールがコーヒー栽培用地(そのほとんどが機械化導入が難しい傾斜の用地)に使用されており、約55万世帯がコーヒー生産に従事しています。年間を通してアラビカ豆を栽培していますが、基本的にコーヒーチェリーの種子のみが使用され、籾殻と果肉は廃棄されるため、大量の廃棄物が発生する。このコーヒー殻のバイオマスは年間78万4,000トンと推定され、再利用されるのはわずか5%となっています。再利用といっても基本的には堆肥(窒素を含んでいるため)のみで、有機化合物に生産し直す・・・というところまでは到達していませんでした。


ところが最近になり、当地国立大の研究グループ ”Aprena(Aprovechamiento Energético de Recursos Naturales)”の研究者たちの牽引により特に再生可能エネルギーに変換しようとする動きが始まりました。


具体的には、コーヒー殻を「水熱変換(Hydrothermal Conversion: 水を利用して物質を高温高圧下で化学反応させるプロセス )」させ、500mlの容器に10gのバイオマス(コーヒー殻)と90gの水を入れて混合することになります。180度~260度の温度と20メガパスカル(1平方インチ当たりの力ポンド)までの高圧力で処理され、液体と固体に分離することができるそう。
それが一体どう活用できるかというと、まず①重金属や染料など、水中の汚染物質の除去への応用。研究者は現在、この物質をボゴタ川流域の水質改善に応用したい意向を表明しています。


糖類(6.7%)と、ギ酸(Formic acid, 14.6%)、レブリン酸(11.4%)、ヒドロキシメチルフルフラール(1.4%)といったその他の化学化合物も確認された。 これらは、②バイオ燃料や工業・医薬品・食品材料などの付加価値製品の合成の基礎となるんだそう。触媒を利用すると、もっと使い道が広がるんだとか。


このようなコーヒー殻の再利用を呼び水に、コロンビアのクリーン技術と持続可能なエネルギー開発はますます活発化していくことになりそうです。

<コラム>カリで本の国際展示会開催! ゲスト国は「日本」

ようやくCOP16も終わり、11月24日にはメトロポリタン都市計画の地方選挙が終われば今年ももう休暇モードか・・・と思いきや、11月14日~24日にかけて、当地で国際本の展示会が開催されました。コロンビア中の出版社、作家、翻訳家、書店関係者、読者などが集まり、出版業界の最新トレンドがわかるイベントが連日開催されたほか、 国ごとの文学や文化の多様性を体験し、翻訳や国際的なコラボレーションの促進にも一役買ったと思われます。


今年の招待国は「日本」。ジブリのキャラクターと写真が撮れる特設ブースのほか、日本食屋台、生け花教室、風呂敷レッスンなど特別イベントも盛り沢山。日系人協会の全面協力もあり、夕方には浴衣で盆踊りをするなど大活躍。


その他、NY在住の増田セバスチャンのKawaiiの定義や、芥川賞作家で劇作家でもある本谷有希子氏の「これからの文学の在り方は?」といったテーマのトークショーが開かれました。


私は後者の本谷先生にアテンドしたんですが、これがめっぽう面白かった! 

スペイン語ですでに翻訳されている芥川賞受賞作品「異類婚姻譚(Mi marido es de otro especie)」と短編集の「嵐のピクニック(Picnic en la tormenta)」を引用しながら、どうして不条理を描くのか? 人が本質的に見たくないものを表現するとはどういうことか? テクノロジーと今後の文学界は? のテーマでバジェ大学講師のアレハンドロ・アルサテ先生、翌日はダニエラ先生とのトークセッション。「人が見たくないものをあぶりだしたい。人間の暗部(差別意識や対抗意識など)にその人の本質が現れる」との先生の言葉に場内も盛り上がり、質問コーナーは時間オーバーしても手が挙がり続けました。個人的には小説の執筆手法としてマジックリアリズムをいかに落とし込むか、というお話がおもしろかった・・・。現実世界に絶対にありえない非現実的な出来事や要素が、現実の一部として描かれていくための過程。それを自分のものに落とし込むために、1000本ノックならぬ60本ノックでひたすら書き続けた下積み時代。作家デビューして10年間は何の賞とも縁がなく、10年越しにいきなり獲った芥川賞で解き放たれたのは、「編集者からのプレッシャー」。小説の映画化で口出ししたら自分の作品ではなくなり監督と喧嘩した経緯・・・。聴衆も難しい文学界の話よりも、こうした「人間・本谷有希子」の話に魅了されていくのがよくわかりました。


アテンド通訳として同席したわたし。ほんっとーにアホなことに、司会者が引用した”ロシアの山に登ったとき(Montaña rusa)…”という「嵐のピクニック」の「哀しみのウェイトトレイニー」の一説の引用で、「あれ、ロシアの山に登った個所なんてあったっけ??」と目が点に。なまじ原作を読み込んでいただけにわからなくなった! あとから、スペイン語でジェットコースターを「ロシアの山」と記述することを知りましたが、いやー本当に本当に頭が真っ白になりましたわ・・・。


そんなアクシデントもありつつの2日間。本谷有希子さんの人柄のファンになりました。次日本に帰って公演やサイン会があったら伺ってみようかな。

ボリビア・UAGRM大学のFVC講義に登壇しました!

2023年3月にボリビアのガブリエル・レネ・モレノ自治大学(UAGRM)において、JICA チェア「日本モデルによる企業管理」(ディプロマコース)が開講しました。

3月から約半年間のコースです。初年度も3時間講義をお預かりしコロンビアにおける米粉のアクティビティを例にフードバリューチェーン構築(FVC)についてお話しした懐かしい思い出。その縁で2024年3月実際に現地を訪れてセミナーも実施しましたが、今回のオンラインでは二度目の登壇となりました。楽しみだけど、2日間にわたり計6時間のセミナー・・・スライド枚数計85枚を最後のほうは獣じみて作成しましたが、まあそれもよし。初日から50人程度の学生さんが熱心に参加してくれました。

食品に限らず、一つの商品やサービスを産みだしながら生産から消費までの各ステージにおける付加価値の創出と持続可能性の向上について、双方向の議論は白熱。去年の教訓から必ず休憩はとろうと決意していたものの2日間結局ナシ。むしろ最後の締めまでたどりつけないほど、たくさんの発言を求める手があがりました。初日は消費者とのエンゲージメント強化、環境に配慮したサプライチェーンの構築やデジタル技術の活用方法についても具体例を交えた説明を実施しました。


 2日目はケーススタディに重きをおき、「ボリビアの名物料理サルテーニャを日本で売るなら、いったいどこに、どのように付加価値をつけるのか?」をテーマにブレイクアウトルームを活用しながら話し合いました。具体的には損益分岐点を踏まえて、①どのような手段で販売するのか? 初期投資の比較(フードトラック、イベント販売、実店舗)、②日本人の関心をひくにはどうしたらいいのか? ③日本人向けのアレンジ、ユニークネス等・・・。


講義に参加した学生からは「日本人にどうアピールすれば、朝食に油っこいものを食べるのか(サルテーニャは朝食に多用)」など、面白い観点から議論はやまず、ケーススタディ後には持続可能な食品供給の必要性、将来のキャリアを考える上で食糧の安全保障というセクターについても話し合いました。学生さんにとって、FVCの現状と課題を理解し、次世代のリーダーとして成長できる機会となったらこんなに嬉しいことはありません。

COP16の成果やいかに?

2024年11月1日、約2週間のCOP16が閉幕しました!

結局、先進国の資金拠出の具体的な数字は合意に至ったのか? 

2022年に採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組(GBF)に基づき、生物多様性の損失をストップさせるための2030年迄のより義務化した計画は策定されたのか?


最終週、各国はGBFの目標に合わせた国家生物多様性戦略および行動計画(NBSAP)を発表し、そのための進捗状況を報告しました。

さらに生物多様性保全のための、肝心の資金調達は2030年までに年間2,000億ドルを調達することとしたものの、各国の割り当てまでには至らず。。。少し物足りないかもしれません。


また、遺伝資源に関するデジタル配列情報(DSI)の利用と利益配分は、これまでの歩みを踏襲するように先住民や地域社会の権利を強調。気候変動と生物多様性の相互作用にも注目が集まり、これらの問題に総合的に対応するための方策を”検討する”という表現にとどまりました。各国の戦略がどれだけ現実的で効果的であるかの検証もありましたが、個人的にはもう少し踏み込んでもよかったような…。

ただ、カリ市は「殺人事件も起きず、テロもなかった!」という意味でテンションマックス。ラジオはDJが「私たちはおりこうさんでしたね」と市民をねぎらっていました。そこ?


 次回の気候変動会議COP30は、2025年11月10日~21日にラジルのアマゾン地域にあるベレンで開催される予定です。気候変動の影響を最も受けやすい先住民の権利を擁護し、先住民族や現地住民の声を高める目的があるとブラジル大統領は意気込んでいるんだとか。でもなぁ、それにしても環境問題って難しい。生態系の保全に向けた国際的な連携と進捗は常に共有されるべきですが、一か国の努力だけでどうにでもなるものでもない。それだけにCOP16のラップアップを見ていると「無事開催できただけでほぼ目的は達成」というコロンビアの思惑が見えるだけに、もどかしい気持ちが残ります。

COP16開催中のカリ! 会議成功の鍵は資金拠出の合意

そろそろ雨季に入る頃ですが、気温35度が続くカリ。それでも普段より暑く感じるのは熱気のせいかもしれません。

COP16(生物多様性条約第16回締約国会議。2024年10月21日~11月1日迄)において現在、約1万5,000人の各国代表者が参加しており、さらに約1,000人の報道関係者も集結。非公式に一般市民が参加できる「グリーンゾーン(zona verde)」も設けられ(写真参照)、約15万人が来場する見込。勿論厳重な警備が敷かれてており、市内や周辺地域には4,000人以上の警察官と1,700人の兵士を配置しています。ドローンや警備ボートの導入、そして観光や集会の主要な場所での特別パトロールが行われています。その努力の甲斐あり、今のところ外国人の標的にしたテロや殺人はありません。


本COP16のテーマは「自然との平和」。2022年COP15で採択された「昆明モントリオール生物多様性フレームワーク(KMGBF)」の進捗や点検・強化が主な目的です。このフレームワークは2050年までの生物多様性保全計画で、人間と自然が調和して生きるための行動目標を設定しています。


具体的には野生動物の管理や生物多様性の主流化(農業や観光業などの産業に生物多様性保全を組み込む)ですが、最大の課題は生物多様性保全のための資金確保です。要は環境資源を消費する先進国と、途上国のお金のバランス。現在、更新された国家生物多様性戦略と行動計画(NBSAP)を提出したのは34か国のみで、開発途上国の生物多様性保全支援のために先進国が年間200億ドルを2025年までに提供するという合意が難航中。新たな専用基金の設立についても各国の意見が分かれています。


最終週のテーマは特に、デジタル遺伝情報の管理や先住民族の権利に関する議論。これがCOP16の成功を左右するといわれますが、その鍵は「公平な利益分配」と「アクセス権限の管理」。具体的には、DSI(Digital Sequence Information)が生物多様性から派生する遺伝情報であることから、先進国がアクセス・利用する際に資源を持つ発展途上国や先住民コミュニティに正当な利益が還元されるかどうかが焦点です。


何をもって正当なのか? 

環境は消費国(先進国)・途上国で単純に分けられるものなのか(人口が多い先進国だって野生動物や豊かな自然環境を備えている)? 先進国であれ途上国であれ、資源を提供する国がどうすれば自分達に経済的利益や知的財産の分配を受けていると実感できる政策がとれるのか。将来の技術発展に対応できる柔軟な制度をこのCOP16で構築できるのか、最後まで注視しようと思います。

コロンビア発 パネラ(サトウキビの砂糖)の生産者向け新規プロジェクトキックオフ!

一度当地に来たことのある人なら、麦茶によく似た甘い飲み物(アグアパネラ)を口にした経験があるでしょう。大人には甘すぎるくらいですが育ち盛りの子供たちを中心に大人気。アグアパネラの材料であるパネラは、砂糖を精製せず液体のまま固めたもので、ブロック状や円錐形にされて売られています。通常飲み物やデザートに使われ、どこのスーパーに行っても必ず!!あるもの。


そんな中、当地経済紙アグロネゴシオ(2024年10月18日付)によると、当地中央部クンディナマルカ県ラ・ペーニャ地域のパネラ生産者に40億円に該当する予算規模で新規プロジェクトを開始することがわかりました。”生産プロセスの効率性向上と持続可能性を高めるための新技術の利用促進”という名目ですが、同地域の少なくとも25の小規模生産者は工場の農業インフラの改善にあたることになります。


具体的には、地域のパネラ加工工場を近代化することであり、生産工程が最適化されパネラの品質が向上し、生産者の労働条件まで改善されること。インフラの改修も含まれ、自治体における生産と農村開発の強化につなげたい考えだそう。


パネラは、コーヒーに次いでコロンビアで重要な農産物産業であります。農村開発省によると、当地では約35万世帯がこの活動に従事しており、約27万8,000人の直接雇用に相当します。


パネラ用のサトウキビは29の県で栽培されており、中でも中央部ボヤカ県、北東部サンタンデール県、クンディナマルカ県、カウカ県、アンティオキア県が重要地帯。収穫量の99%は国内消費用で、輸出用は1%にとどまる程度。

米国が主な輸出し向け国でですが、2018年以降スペインや他のヨーロッパ諸国もその風味と香りの良さからコロンビア産のパネラに関心を強めています。実際、耕作面積と1ヘクタール当たりの生産高はコロンビアをインドに次ぐ世界第2位のパネラ生産国に位置づけています。なんといってもパネラの魅力はその独特な甘さ。サトウキビを精製せずに作られるため、ミネラルや栄養が豊富で、キャラメルのような深い風味を持っています(さっき大人は苦手な甘さって言ったのに、どっちやねん)。デザートや焼き菓子にもいいし、同じくトウモロコシを練りこんだアレパに混ぜてもグー!! B級料理といっては失礼ですが、このプロジェクトを通じて日本でも早くブームがこないかな、とそわそわしています。

速報 コロンビア 米国産牛肉の輸入制限を5ヶ月ぶりに解除

コロンビア農牧院(ICA)の公式発表(2024年10月13日付)によると、今年4月以降鳥インフルエンザ「H5N1型」警報発令に伴う予防措置として発令されていた米国産牛肉にかかる輸入制限が10月中旬に解除見込であり、輸入再開が正式に決まった。

米国食肉輸出連合会によると米国は対コロンビアへの牛肉供給国としての地位を固めつつあり、現地の流通業者と戦略的提携を結ぶことで存在感を高めている。特により安定した供給を確保するために当地の物流上の課題を克服する動きすら見られていた。


2023年には同国からコロンビアへ計7,642トンの牛肉が輸出された。一方、2024年第一四半期において、コロンビアにおける米国産牛肉のニーズが3%増加し4月15日の時点で数量ベースで1,698トンに達していた。


一方、2024年3月以降、テキサス州などの乳牛から高病原性のH5N1型の鳥インフルエンザウイルスが相次いで検出されたことをきっかけに4月15 日以降、予防措置としてアイダホ州、カンザス州、ミシガン州、ニューメキシコ州、ノースカロライナ州、オハイオ州、ダコタ州、テキサス州はコロンビアへの食肉輸出ができなくなっていた。


ICAは制限解除の理由として安全性が確保されたためとしている。

いよいよ開催間近! COP16を見据えてコロンビアの農業団体のアピールとは?

あっという間に10月に入りました! 

この一週間はコロンビア全土で秋休み。元気ありあまる子供たちとハロウィンの準備をしたり、クリスマスの予定を立てたりとそれぞれ思い思いに過ごしています。ただ一味違うのは今年のカリ。約2週間後に迫るCOP16誘致都市としてショッピングモールやスーパーのあちこちに珍しい鳥類の写真が飾られるようになりました。早速会議が開催予定のYUMBO市までの道路封鎖予定状況も見えるようになり、いよいよ世界150か国から180 人の使節団が来るのか…という雰囲気です。もちろん弊社もバッチリ業務にあたる予定で、わくわくしています。


外せない点は、ホスト国であるコロンビアにとって生物多様性の保護及び環境分野の存在感を示す機会であるということ。また、農業部門にとっても環境保護と農法をどのように実践しているか、国際社会にアピールすることができます。

詳しく見ましょう。コロンビア花卉協会(Asocolflores)はカナダ・モントリオールで開催されたCOP15の成果に関して、①過去25年間で花卉農家が化学農薬の消費量を50%削減したことを強調(Asocolores)。同じく、過去10年間でプランテーションにおけるバイオインプット(植物由来のテクノロジー)の使用量が600%増加したことも特筆に値します。


同COP15のターゲット11は、自然への貢献度に関するものでした。これを受け、コロンビア花卉業界は森林破壊との闘いや絶滅の危機に瀕している作物種の保護に関するプロジェクトを展開し、生物多様性の保全と水資源の適切な管理に基づき農業の管理ツールを適切に使用した結果だと想定しています。

当地のやし油(パーム)栽培部門も、国内でやし油用地となっている60万ヘクタールのうち、森林破壊の警告が出ているのは1%未満の4,000ヘクタールだそう(当地経済紙アグロネゴシオ2024年10月4日付)。加えて生産農家も持続可能な製品づくりに率先して取り組んでおり、コロンビア独自のやし油認証制度(APS。適切な農法によって生産された製品であることを示す)を導入しています。油残渣の処理に特化した工場の開発に60億ペソ以上の投資も発表され、「環境保護と高品質の製品づくりの両立」が加速しています。

また、北部セサル県サン・アルベルト市では、やし油の投入資材として使用できるバイオ堆肥を生成にも着手。この資材の使用は化学薬品の使用を減らして土壌と環境を保護するだけでなく、植物の生産性を高めるための自然エネルギーの生成にも役立つことが想定されています。


最後にサトウキビセクターをみると、国内サトウキビ連盟(Asocaña)によると10年前の生産技術に比べ、天然資源を効率的に利用するための取り組みが加速しています。具体的にはサトウキビ栽培における水資源の適切な管理で、生産工程における水の使用量を50%削減することに成功(Asocaña)。加えてサトウキビ産業は堆肥化の導入により、作物への化学肥料使用率のゼロも達成。

これらすべて、Asocaña が研究を通じて製品の環境にやさしく持続可能な農法実践のための年間約 630 億ペソの投資によるものです。


さて、もう少ししたら多くのゲストが訪れるコロンビア・カリ市。大急ぎの舗装工事を横目で見ながら、「始まると意外にきちんと終わらせるのが中南米だよな~」と独り言ちています。COP16、成功しますように!

コロンビア 生産性獲得のため全国コメサミット開催

日本では令和のコメ騒動がやっと落ち着いた頃と思いますが、こちらコロンビアでは2030年の米国産コメの輸入関税ゼロに向けて生産性・競争力獲得の動きが強まっています。

2024年8月、全国コメ生産者連盟(Fedearroz)とコメ産業連盟(Induarroz)の代表、農業開発省、生産者代表、政府関係者が一堂に会し、「どうしたら今後コメの収益をあげ続けることができるか」というテーマで、以下対策を決定しました。
①コロンビア国立コメ協議会(el Consejo Nacional de Arroz)の設立、②認証種子の大規模使用推進、③東方大平原における作付区域の一部見直し、④コメ安全基準の見直しなど4点が決定され、これらの投資額は200億ペソ以上にのぼることもあわせて報告された。

カルバハリノ農業開発大臣は、「これにより生産者、産業、消費者を守ることができる。我々は、コメの競争力へのコミットメントを強化していく」と自信を見せました。

コメにおける新たな国家開発プログラムの対象となる地域は、東部カサナレ県が86億4,900万ドル、稲作地帯として知られるトリマ県が42億3,000万ペソ、北部セサル県が45億9,400万ドルである。この予算はコメの収穫後調整(乾燥、貯蔵、脱穀)などの生産工程に使用される予定で、新たなプラント建設が想定されます。

個人的には差別化されたブランド米をもっとオールコロンビアで取り組めないかと思います。その土地ならではの特徴や伝統を活かし、地域ブランド化も進めてみたい。弊社も昨年参加したコメのバリューチェーンプロジェクトも一旦は締めとなりましたが、次に向けて動いている真っ最中。国内外での市場シェアを拡大できるよう、民間の立場から連携していきたいと思います。

コロンビア産牛肉のイラン向け輸出が承認

南米きっての親米派、コロンビア。そのイメージでみると意外ですが、反米の外交路線をとるイランとは牛肉を介して新しい貿易関係を開くことになりました。


2024年9月14日ICA(コロンビア農牧庁)の正式発表によると、INVIMA(コロンビア医療食料品監督庁)とイラン間での衛生検要件策定及により、同国への牛肉輸出が実現しました!


コロンビアとイランの貿易関係は2016年の496万米ドルから2021年にはわずか11万米ドルへと減少傾向を示していた中で、この新市場の開拓はとりわけ重要とみられています。イランでは宗教的に豚肉の制限はありますが牛肉、羊肉、鶏肉が一般的に消費されているほか、主に羊肉や鶏肉が好まれる傾向が強いとのこと。ちなみにイランの1人当たりの年間牛肉消費量はおよそ5~10キログラム程度とされていますが、これは国際平均と比べると低めです。


ただ今回コロンビア側が強調しているのは、「コロンビアの牛肉輸出基準が認められた」という点。それもそのはず、牛肉の輸出基準では、品質、安全性、衛生面が特に重要です。
①衛生基準
HACCPはじめ、国際的な衛生基準に基づいた処理・加工が必要。特に病原菌の混入防止、衛生的な屠殺・処理が求められ、屠殺の方法についても、イランの宗教的規制(イスラム教のハラール基準)に適合できたということ。
②品質管理
牛肉の鮮度や部位の品質。冷凍・冷蔵技術や輸送中の温度管理が厳密に管理されるほか、肉質の基準(霜降り度、柔らかさ、色合い)がイラン市場の好みに合致していること。
③動物の健康管理
輸出される牛は、健康な個体であることが求められ、疾病管理が徹底されていること。狂牛病(BSE)や口蹄疫(FMD)のない輸出国であること(健康証明書や獣医師による検査結果提出)。
④トレーサビリティ
牛の履歴管理。どの農場で育てられたか、何を食べて育ったか、どのように処理されたかを追跡できるシステム。
コロンビアの牛肉は現在、93カ国に向けて合法的に輸出が可能です。ICAは今後も輸出拡大方針は変わらず、コロンビアの畜産業者を国際基準に合致させるため努力を惜しまないことを約束。より要求の厳しい国際市場に参入するため、指導を強化していくことになります。


今回、対イランの牛肉輸出は新しい経済的機会を見出すだけでなく、両国間の貿易関係を活性化させる後押しになるのかもしれません。個人的には、イスラム圏でのハラールに則った屠殺条件をクリアできたことを評価したい。イランでコロンビアの牛肉ブームが起こったら素晴らしいですね!(当地のおいしいPunta de Anca,イランの人に受け入れられますように)

コロンビア 18万トン以上のパーム油が環境持続可能性基準を満たす

パーム油の主要な産出国は主に熱帯地域に位置しています。例えばインドネシア (世界最大のパーム油生産国で、全体の約50%以上)、マレーシア、タイ、ナイジェリア等。そして中南米では我らがコロンビア。世界共通の使い道として、①加工食品(揚げ油、インスタント食品)、②日用品(石鹸やシャンプー)、③飼料、④サプリメント、そして⑤バイオ燃料(再生可能エネルギー源)に加工しています。一方、食品としても工業製品としても必要不可欠であることから、環境への影響が懸念されていることも事実。


熱帯雨林が大規模に伐採される森林破壊、それに伴う炭素吸収量の減少(森林が消失すると二酸化炭素を吸収する機能が失われる)、泥炭地の破壊(泥炭地は炭素を多く貯蔵している湿地帯ですが、これを破壊すると大量の温室効果ガスが放出される)、野焼きによる大気汚染、水質汚染、現地のコミュニティへの影響(地域住民と企業との対立)…。


持続可能なパーム油生産を目指す「RSPO(持続可能なパーム油のための円卓会議)」などの国際的な取り組みも進められていますが、課題は依然として大きいままです。


世界第5位のパーム油生産国であるコロンビアは、どのように持続可能性への取り組みを行っているのか? ましてや当地は大規模プランテーションではなく国内生産量の30%から40%を占めているのは零細農家。持続可能な農法を実施する上で、スマート農業が導入できない(インターネット接続不可)、生物多様性への理解、環境保護や認証に対する知識の伝播が課題でした。


当地経済紙アグロネゴシオ紙(2024年9月14付)によると、そのアンサーとして当地が導入したのは新規「Cocliプロジェクト」。Fedepalma(コロンビアパーム油連盟)とCenipalma(パーム油協会)が支援するこの共同プロジェクトであり、1,500以上の生産者と2,600人以上の労働者に対し、労働条件の改善と自主的な持続可能性基準や規制を遵守し、国際市場で競争できるようにするための技術、教育、資金へのアクセスを提供することに重点を置いています。具体的にCocliは、ApcoおよびRspo認証を含む厳格な持続可能性基準のもとコロンビア国内の約6万ヘクタールの土地を管理しており、これにより18万2,000トンのパーム油と9,000トンのパーム核油の生産が促進され、これらの地域における厳しい環境基準の遵守が保証されることなります。


また、同プロジェクトは、コロンビア北部、南西部、中部のパーム油栽培地域で実施され、10ヘクタール未満の零細農家が農業慣行を最適化し、気候変動への対応能力を強化する機会を得ることになるそう。小農に焦点を当てたデータ主導のアプローチを採用することにより、生産者の直接的な利益が増えるなら何とすばらしいことか!


パーム油は、食品から美容・パーソナルケア製品まで、私たちが毎日使う幅広い製品に欠かせない成分で、日本の食卓にコロンビア産パーム油が使われているとすれば誇らしい。環境保護や公正な労働条件確保だけでなく、生産者にとって儲けのある、続けられる営農であってほしいと思います。