コロンビア 初の左派政権誕生 グスタボ・ペトロ氏が当選確実

前ボゴタ市長で左翼ゲリラにも所属していた過去をもつグスタボ・ペトロ氏は得票率は50.44%を獲得し、2022年-2026年の政権を握ることが決まった。副大統領であるフランシア・マルケスは初の女性副大統領となり、「コロンビアは変わる。愛をもって対話する」と新大統領は国民に呼びかけた。

ペトロ氏のマニフェストは、

①新規雇用、

②生産的な新経済、

③住宅の保護

石油と石炭に大きく依存していた現在の経済モデルを段階的に脱却し、採掘経済から生産経済へと移行させる。ペトロ氏は演説において、「新政府では、従来型の鉱山開発は禁止する。水圧破砕法(坑井内を満たした流体を高圧で加圧することで、坑井付近の貯留岩を人工的に破壊する技術。掘削時にガスが噴出して炎上したり、水中や大気中に有害物質が漏出する場合がある)、及び沖合の鉱床開発は認可しない。炭化水素の資源開発の新しい環境ライセンスも付与しないし、環境保護に根ざし民主の決定を尊重する」と宣言し、大衆の支持を集めた。

それにとって代わるように、農業インダストリーの促進に焦点を当てている。アグロフォレストリー(樹木を植栽し、樹間で家畜・農作物を飼育・栽培する農林業。森林破壊を防ぎ、地域の雇用を増やすメリットがある)、耕作放棄地などを活用した放牧システムの導入、さらにはコミュニティ組織の下での自然観光(エコツーリズム)の開発に着手するという。こういった農業インダストリーの目的は、コロンビアが農業食品の生産の主導権を握り、それによって食品輸入に取って代わることである。ペトロ氏は食品輸入に「スマート関税」を設定する可能性を示唆しており、外国企業にとっては頭の痛い問題に発展しそうだ。

さらに、新大統領は「保証された雇用」を大々的に掲げている。これは、国が働く手段をもたない労働者に迅速に雇用を提供する計画で、民間企業では月額最低賃金を保証するという(2022年1,000.000 COP, 約3万4,862円)。これは緊急対策や民間セクターの雇用代替ではなく、恒久的に補完するものとして機能する見込みだ。

こうした雇用保証に加えて、貧困層のための幅広い補助金も認められており、その中には年金の加入資格を満たさないすべての高齢者に対する月額50万ペソ(約1万7,431円)の補助金を開始するという。長年の課題である治安面では、政府と戦闘状態にある左翼ゲリラ「民族解放軍(ELN)」との和平交渉再開や、対話を通じた麻薬組織との解決をうたっている。

独立の父シモン・ボリバルらにより1819年8月7日のボジャカ戦争で大コロンビアの建国が宣言されたことから、大統領就任式はその日に行われる習わしである。長年南米唯一の親米派として知られたコロンビアで初の左派政権誕生を、世界はどのように理解するのか。それがわかるのはもうすぐである。

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