新農業大臣セシリア・ロペスが挑戦するコロンビア農業の未来は「土地活用」と「女性」がキーワード
8月7日はコロンビア独立のきっかけとなったボジャカ戦勝記念日であるため、4年に一度の大統領就任式は同日に開催されることが慣行である。2022年8月7日、この国始まって以来の左派政権となるグスタボ・ペトロ氏が新大統領に就任し、「愛するコロンビアのために団結しよう。武器を捨てよう」と国民に呼びかけた。
新大統領が牽引する閣僚の一人がセシリア・ロペスである。79才の新農業大臣は「恵まれた農業地形と豊かな水、中南米で最大の農民人口。私たちはすべてを持っているのに、一部の技術不足により食品(完成品)を輸入してばかりだった」と嘆き、「議題の俎上に農村をあげる」と宣言している。
農業省が取り組む最初の課題は土地活用である。土地台帳システム(農業用地の用途・目的を再定義し、それに応じて課税を徴収する)を開始し、土地を所有する人々が休耕地扱いにする場合、税金の徴収を可能にするという。しかしその土地はあくまで政府が「非生産的」と分類した場合対象となり、それも所有者とのコンセンサスがはかられる。目的は課税だけでなく、コロンビア農地を客観的にカテゴリー分けしてすべての農業生産システムに利益をもたらすことと主張する。現在、耕作地の 14% 未満つまり 国土のうち約3,920 万ヘクタールしか農業に活用されていないことに危機感を覚えた政府の目玉政策となりそうだ。
当地農業が第一に目指すことは国内市場を満足させることだが、当然輸出強化も視野に入る。ロシアのウクライナ侵攻やドル高騰などの外的条件によって引き起こされる食糧危機を考慮すると、コロンビアのもつ農業国としてのポテンシャルは過小評価できない。国内需要の充足と海外市場での競争力がキーワードとなる。
加えてロペス新大臣は「農村の女性を」中心において農業改革を行うと断言した。「この分野の女性達は社会的地位において最低にあり、すでに男性との格差がある都市の女性ともかけ離れており、土地の所有権すら持っておらず農業をやめたら何も残らない。非常に不安定な状況で労働している」と語り、問題解決へ努力することを約束した(当地経済紙LR, 2022年7月16日付)。
コロンビアは現在農産物、食品、飲料部門で年間 計150 億米ドルの輸入規模があり、輸出額の約 94 億 4000 万米ドルを上回っている(2021年DANE)。輸入のうち最も多いのはトウモロコシ、小麦、大豆で、それぞれ 610 万トン、190 万トン、150 万トンで計70% を占める。この貿易収支の是正がポイントとなりそうだ。
もう1つ、畜産用の土地活用もロペス新大臣を待つ課題である。 DANEによると、畜産用の土地は国内約 3,400 万ヘクタールが使用されている。畜産業は多くの土地を必要とするため、前述した土地台帳システムはその用途と中身(農業と畜産のバランス)を決定するため活用されるようだ。ロペス新大臣は定義された用途に応じて、国へ土地を国に売却するか、生産するか、税金を支払うかを決めてもらうという。「押し付けることではなく、対話が大切」と語るものの、今後大きな波乱を呼ぶことは想像に難くない。