<コラム> コロンビアで日本語教育するということ
先日のににっけ
写真 先日の日系人の集まりで作ったいなり寿司
生活は7割主婦なので、普段考え事は夕飯と明日のお弁当とおやつで占められている。いかに冷蔵庫をすっきりさせるかが。決まった曜日にしか買い物に行かないし、作り置きもせずその日作りたいものを作る。
こちらの生活で何がつらいって、お弁当で冷凍食品が使えないことに尽きる。コロッケとかレンコンのはさみ揚げとか、手作りするには工程が多いけど一気に外食感の出るズルができない。す・べ・て・手作り!! もちろん、上の子の学校は有料の給食もあるのだけど、下の子の保育園がお弁当なので1個作るなら2個も一緒なのと、上の子がコロンビア料理で口に合わないものも多く、結局注文せず週5でお弁当を作っている。だいたいいつも同じ。焼き鮭、たまごやき、ウィンナー・・・。それでも「色んな食べ物が小さくちょこちょこ入っている」というのは興味深いらしく、「今日も写真撮ったわよ~」と先生に言われて冷や汗かくことも。毎日のことを趣味にするのはコスパがいいので、寝る前にお弁当作りの本をチラ見したり(決して熟読ではない)、おにぎりに海苔を貼ってひんしゅくを買ったり(キャラ弁は作り手の自己満足という清水ミチコの言葉が刺さるぅ~っ!!)種々工夫しております。そして、この4時45分起き生活にもすっかり慣れて土日も変わらない。
さて、先日上の子の通うインターナショナルスクールの先生と個別に面談を設けていただいた。学校側が設定したものではなく、こちら(親)が話し合いたいとメールし、スクールカウンセラー同席のもとで、月曜日の放課後。いつもスクールバスで降園する子どもは他の先生方のミーティングの円の真ん中で積み木遊びをして、離れた部屋で私達はコーヒーを飲みながらの和気あいあいとした雰囲気だった。
テーマは「スペイン語の上達」。5歳とはいえ、まだほかのコロンビア人と比較してボキャブラリーの少なさは否定できない上写真嫌いでハイハーイ!と手をあげて発言するタイプでもない。じっと観察して輪に入るタイプのくせに、仲良しの子とは果てしなくお調子者にもなり(壁に黒マジックでいたずら書きするという前科あり)、かと思うと発言が求められる場では黙る子ども。いずれは英語の授業が占めていくのだけど、ほぼコロンビア人と育つので、スペイン語からは逃れられない。「もっと話せるようになるよう、おうちでもスペイン語の時間をつくってみて!」と。
うちはまず、親がスペイン語を話すことを子どもが嫌がる。そして、日本語は大好きで毎日ドリルを進めてひらがなの読み書きも問題ない。早急に成果を求めず、このまま日本語を第一にスペイン語は二番目、英語は三番目で長い目でみていけたら・・・と伝えたかったのだ。
「もちろん、日本語が第一なのはとってもいいこと。ぜひ続けて。でも、20分だけでもいいから、スペイン語クイズ~って感じで、おうちで話す時間をつくったらどう?」。メールなら「うちの方針では日本語のみなので」と返したかもしれないけど、カウンセラーの優しい言い方に、「それもいいかな。やってみたい」と素直に思えた。そして今1か月弱実践し、スペイン語クイズは寝る前の定番のお楽しみタイムに。下の子も張り切って参加している。その結果かはわからないけど、前にも増してスペイン語が流暢になったそう。子どもの成長力の早さに改めて脱帽し、「すぐに日本語の心配をするようになるよ」という誰かのアドバイスを思い出している。
そんな中、先日こちらに嫁いで65年という日本人女性と話した。日系人と結婚したものの相手はすでにスペイン語のほうが得意だったため、こちらで産んだ4人の子どもは日本語を話すことはないという(コロンビア日系社会ではこのケースがとても多い)。
「子どもと日本語で話せないのは寂しくないですか」と不躾な質問をした私に、「そんなこと考えなかった。考える余裕もなかった」と返した女性。写真でお見合いをして嫁ぎ、パナマの経由地で和服に着替えてコロンビアに降り立った二十歳の若い頃。そこから65年、子供、孫、ひ孫ととても満たされた生活をしていて、バイタリティにあふれている。
私が子どもの日本語習得を妥協できないのは、こうした彼女達の生の声を聞ける人間であってほしい、と心から思うからなのだ。