<コラム>カリで本の国際展示会開催! ゲスト国は「日本」

ようやくCOP16も終わり、11月24日にはメトロポリタン都市計画の地方選挙が終われば今年ももう休暇モードか・・・と思いきや、11月14日~24日にかけて、当地で国際本の展示会が開催されました。コロンビア中の出版社、作家、翻訳家、書店関係者、読者などが集まり、出版業界の最新トレンドがわかるイベントが連日開催されたほか、 国ごとの文学や文化の多様性を体験し、翻訳や国際的なコラボレーションの促進にも一役買ったと思われます。


今年の招待国は「日本」。ジブリのキャラクターと写真が撮れる特設ブースのほか、日本食屋台、生け花教室、風呂敷レッスンなど特別イベントも盛り沢山。日系人協会の全面協力もあり、夕方には浴衣で盆踊りをするなど大活躍。


その他、NY在住の増田セバスチャンのKawaiiの定義や、芥川賞作家で劇作家でもある本谷有希子氏の「これからの文学の在り方は?」といったテーマのトークショーが開かれました。


私は後者の本谷先生にアテンドしたんですが、これがめっぽう面白かった! 

スペイン語ですでに翻訳されている芥川賞受賞作品「異類婚姻譚(Mi marido es de otro especie)」と短編集の「嵐のピクニック(Picnic en la tormenta)」を引用しながら、どうして不条理を描くのか? 人が本質的に見たくないものを表現するとはどういうことか? テクノロジーと今後の文学界は? のテーマでバジェ大学講師のアレハンドロ・アルサテ先生、翌日はダニエラ先生とのトークセッション。「人が見たくないものをあぶりだしたい。人間の暗部(差別意識や対抗意識など)にその人の本質が現れる」との先生の言葉に場内も盛り上がり、質問コーナーは時間オーバーしても手が挙がり続けました。個人的には小説の執筆手法としてマジックリアリズムをいかに落とし込むか、というお話がおもしろかった・・・。現実世界に絶対にありえない非現実的な出来事や要素が、現実の一部として描かれていくための過程。それを自分のものに落とし込むために、1000本ノックならぬ60本ノックでひたすら書き続けた下積み時代。作家デビューして10年間は何の賞とも縁がなく、10年越しにいきなり獲った芥川賞で解き放たれたのは、「編集者からのプレッシャー」。小説の映画化で口出ししたら自分の作品ではなくなり監督と喧嘩した経緯・・・。聴衆も難しい文学界の話よりも、こうした「人間・本谷有希子」の話に魅了されていくのがよくわかりました。


アテンド通訳として同席したわたし。ほんっとーにアホなことに、司会者が引用した”ロシアの山に登ったとき(Montaña rusa)…”という「嵐のピクニック」の「哀しみのウェイトトレイニー」の一説の引用で、「あれ、ロシアの山に登った個所なんてあったっけ??」と目が点に。なまじ原作を読み込んでいただけにわからなくなった! あとから、スペイン語でジェットコースターを「ロシアの山」と記述することを知りましたが、いやー本当に本当に頭が真っ白になりましたわ・・・。


そんなアクシデントもありつつの2日間。本谷有希子さんの人柄のファンになりました。次日本に帰って公演やサイン会があったら伺ってみようかな。

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