お米フェス、11月28日実現へ — トリマ県がアグリ・チェーンに光

写真はインディカ米。私も毎日、カリ地場企業Blanquitaの玄米をかみしめております。
コロンビア中部トリマ県で、稲作産業の価値を再定義する象徴的なイベントが実現しようとしています。県都イバゲを中心とする一帯は、国内屈指の稲作地帯(コロンビアの魚沼)として知られていますが、その魅力を体系的に発信する場として「年次お米フェスティバル(Festival Anual del Arroz)」が11月28日に初めて開催される見通しとなりました。条例化と制度化を主導したのは、トリマ県議会のエステファニ・サンチェス議員。同議員が丹念に積み上げてきた政策提案と議会での働きかけが、この節目の実現につながっています。

エステファニ・サンチェス議員。みずみずしいお肌はおコメのおかげかな。
今回のフェスティバル開催は、まさにこの原産地名称の価値を立体的に伝える場となります。サンチェス議員が条例案で強調したのは、生産と文化をつなぐイベントとしての意義。稲作農家、加工業者、流通事業者、料理関係者が一堂に会し、稲作産業のバリューチェーン全体を可視化することが期待されており、参加者が互いの立場や技術を理解し、新たな商談や協働のきっかけを生み出す場として機能する可能性があります。
イバゲ周辺の稲作は、単なる農業生産を超えた地域資源。その背景には、2016年に取得した「原産地名称(Denominación de Origen Protegida/DOP)」の存在があります。原産地名称とは、特定の産地の環境・文化・技術が品質に直接影響を与える産品に対して付与される制度で、イバゲ高原(Meseta de Ibagué)で栽培される米は、地質、標高、気候が組み合わさることで独自の風味と品質を持つと評価されています。昼夜の寒暖差、火山性土壌、水系の豊かさが互いに作用し、粒の張りや香り立ちの良さにつながっています。さらに、標高1000メートル前後の高原での稲作は高度な栽培技術を必要とし、こうした地域の知見の積み重ねが公式に認められた形となっています。この原産地名称は、地域経済において重要な意味を持ちます。品質の裏付けとなる制度があることで、一般米との差別化が明確になり、ブランド力が高まります。その結果、生産者は価格面で有利になりやすく、市場競争の波に飲まれにくくなります。また、加工業者や食品企業が「イバゲ産」を前面に出した商品開発を行いやすくなり、流通業者にとっても説得力のあるマーケティング素材となります。観光面でも効果は大きく、「土地の物語性」を持つ食品はアグリツーリズムや地域イベントとの親和性が高く、訪問者にとって魅力的な体験価値を提供します。
また、フェスティバルは地域の技術向上にも貢献します。講習会、展示、実演などを通じて、最新の農業技術や市場動向が農家に共有されることが想定されており、これまで個々の生産者に委ねられてきた知識や技能が、地域全体の財産として蓄積されていきます。こうした取り組みは、生産性の向上や品質の安定、さらには輸出を含む販路拡大に寄与します。
トリマ県の稲作は、量の面でも国内で大きな存在感を示しています。近年は約10万ヘクタール超の作付け面積が確保され、年間生産量は60万トン台後半に達しています。コロンビア国内の主要な米供給地の一つとして位置づけられており、同県の経済にとって稲作は基幹産業です。こうした生産力に原産地名称という“質の証明”が加わることで、トリマ県の稲作は新たな局面を迎えています。
11月28日に開かれる初回フェスティバルは、地域の稲作が「産地」から「ブランド」へと成長するための重要なステップとなります。制度化されたことで毎年開催される枠組みが整い、投資、研究、観光、食文化を巻き込んだ複合的な発展が見込まれます。イバゲの米が持つ価値を国内外に向けて発信することで、地域経済に長期的な好循環をもたらす可能性があります。
今回の取り組みは、トリマ県が稲作産業の未来に向けて明確なメッセージを発信した出来事と言えます。原産地名称を基盤に据えながら、栽培、加工、流通、文化、観光をつなぐ総合的なアプローチが、地域をさらに強くしていきます。フェスティバルが定着し、地域の多様なプレーヤーが参画していくことで、イバゲの稲作はより豊かな物語をまとい、国際的な存在感を高めていくはずです。私も生憎今年は駆けつけられず、来年は伺う予定です。

