<コラム>ティントを飲み干す前にインフレが来る!?最新農業テックの光と影

コロンビアの朝。どこからともなく漂うアレパ(とうもろこし粉とチーズ混ぜたパン)の焼ける香りと、胃壁に突き刺さるような「ティント」の湯気。
ベネズエラの混乱で名指しされることが多くなった2026年の今も、この光景だけは平和そのものですが一歩ビジネスの現場に踏み出せば冷徹で巨大な地殻変動の真っ只中にあります。
まず、コロンビアが誇るコーヒー、2025年に歴史的な事件が起きました。SICEXによると、なんとコーヒーの輸出額が燃料(原油)を上回ったのです(これに興奮した物流大手のAlmacaféは、2026年に前年比3倍の約600億ペソという、もはや計算機を二度見するような額をインフラに突っ込んでいます)。かつては「おじいちゃんの経験と勘」で積まれていたコーヒー豆が、今やハイテクな冷蔵サイロの中でデータ管理される姿とは隔世の感あり・・・。
一方で、山岳地帯を埋め尽くす「緑のゴールド」ことハス・アボカドの勢いは、もはや「アボカドの逆襲」と呼ぶにふさわしいレベル。2025年の輸出量は20万トンを超え、特にアメリカ人は前年の倍にあたる1億5,000万ポンドものコロンビア産アボカドを平らげています。おかげで地元カリのスーパーMontañaでは、最高品質のアボカドは私たち地元住民が手を出せないほど高騰中。さらに、経営者として震えが止まらないのは、2026年の最低賃金が前年比23%も跳ね上がったこと。農家のおじさんたちと話をしても、「コーヒーの値段が上がったのは嬉しいけど、収穫してくれる若者に払う給料がないから、結局俺が夜な夜なAI収穫ロボットのYouTubeを見て勉強してるんだ」という、笑うに笑えない「DX(必死なデジタル化)」が進行しています。
バジェ・デル・カウカ県に住んでいると、最近やたらと耳にするのが「再生農業(リジェネラティブ・アグリカルチャー)」という呪文のような言葉です。カリやユンボの工業団地では、太陽光を使って空気から肥料を作る「グリーン肥料」なんていう、ドラえもんの道具のようなプロジェクトに世界中からマネーが流れ込んでいるんだとか。世界環境ファシリティ(GEF)が2億9,100万ドルなんていう、パブロ・エスコバルも驚くような巨額支援を決定したおかげで、地元の土壌は今、史上最高にチヤホヤされています。もはやコロンビアの土が吸い込んでいるのは雨水ではなく、シリコンバレー並みのデジタルデータと投資家の野心かも。私たちが日々食べている白身魚Tilapiaや玄米の裏側には、人件費と物流費、そして「地球を救う」という重厚な下心あり。この地で生き残るには、美味しいコーヒーを優雅に飲んでいる暇はありません。その一杯の背後にある「爆速のインフレ」と「最新の農業テック」を飲み込み、笑い飛ばしながら次の一手を打たなければ。
ウクライナ情勢以降、高止まりする肥料価格に対する防衛策として、また欧州の残留農薬規制強化という外圧に対応するための「生物農薬」へのシフトは、2026年の投資トレンドの最前線となりました。コロンビアの「食と農」は今、美味しいものを作る段階から、高度な金融とテクノロジー、そして国際政治の思惑が絡み合うビジネスゲームへと変貌したといえそうです。

