コロンビアで日本式育苗・田植えは定着するのか?
~新しい省エネ稲作・高付加価値米づくりへの挑戦~
コロンビアにおけるコメは、小麦やとうもろこし同様最も重要な主食です。
国内で生産されたコメのほとんどは国内で消費され[ 2020年コロンビア企業連盟稲作報告書La Asociación Nacional de Empresarios de Colombia (ANDI)file:///C:/Users/user/Desktop/Estudio%20Completo%20arroz%20andi.pdf P38]、年間消費量は2015年の39㎏/人から2021年43㎏/人と増加傾向。当地経済紙エル・エスペクタドール(2020年10月5日付)によると、2060年の推定5,500万人のピークまで総人口は増加すると想定され、人口ボーナスを追い風に今後とも穀物の需要は拡大すると思われます。
一方、内訳をみると、農村部と都市部では7.54kg/人(2021年)と開きがあり、これは農村部では米食が頻度の高い主食となっているためであり、外食ではなく家庭内食のコメ消費が顕著であるから。同様に,所得水準の向上とコメ消費量の相関関係も近年明らかになっており、30歳~59歳の月収88万5,000ペソ(約2万5,000円)以下の男性が月6.3kgのコメを消費していたのに対し、同月収261万5,000ペソ(約7万4,819円)以上に達すると5.0kg/月に減少しています[ 2016年~2017年政府統計庁DANE家計調査]。
米食の当地は世界的にみてもコメの生産量で存在感を示しており、2019年には年間271万トンを突破。しかし、生産性は5.09トン/ヘクタール(世界第33位)と大きな課題に突き当たっています。内戦終結後の違法作物代替の観点や、農村部の競争力強化の観点からみても、稲作の生産性アップは喫緊に解決すべき。そこに救いの手となる可能性があるのが、日本の田植えと育苗のシステムです。
まず、コロンビアは直播と呼ばれる陸稲の播種が主流。そこに灌漑システムを設けるには、①土壌を平らにすること、②水管理すること、③育苗して生育を揃えることで、定植後の管理を容易にすることが求められます。コロンビアでは最初の手間がかかることから、育苗に人を雇用することがありますが、外注費用や大型機械を保有していない零細農家にとってそのハードルは高い。
今回、育苗及び高付加価値米づくりの土ならしとしてトリマ県イバゲ、エスピナル、サルダーニャを訪れコメづくりの生産性向上に対する課題を目の当たりにしました。
①自家精米機の不足
多くの農家は精米会社の下請けとして買い取られるのみで、自身で精米・パッケージする技術がありません。また、コロンビアの稲作専門農協であるFEDEARROZも、グルメ米というプレミアム米(FEDEARROZ 60)を生産しているのみで、他は大抵ブレンドするのみ。
日本の農家が保有するミニライスセンター(選別・乾燥・包装を一手に引き受ける機械)を紹介したところ約2,000万円~という価格帯でしたが非常に手ごたえのありました。一家では無理でも、農家同士で割り勘して、少ないロットで15~20品種の多様なお米を販売できれば回収できない投資額ではなさそうです。
②部品の不足
育苗・田植えには大型機械がつきもので、現在コロンビアにはクボタ製の田植え機が販売されています。しかし水稲を導入して田植え機を保有している農家・企業はほんの少し。FEDEARROZですら4台しか持っていません。また、アンブレア地方のパホナレス農園でも、計4台の田植え機のうち稼働しているのは2台(2018年購入)で、耐用年数1,000時間を超えた2017年製の2台は部品が手に入らず修理も不可能とのこと。一方、当地にはクボタの代理店MotoMartが販売を任されており、修理を有償で預かることもできるが、すでに販売終了となったモデルや資本の原理で需要のないラインは部品の調達も難しいとのこと。育苗・水稲普及には不可欠な大型機械化に一体何ができるのか、見極めが必要です。
③コメの加工品づくり
一方、嬉しいニュースも。今回お土産として提供した日本のおかきがコロンビアの商工会議所、FEDEARROZ, SERVIARROZのスタッフに大ウケ。ぜひコロンビアの米でもチャレンジしようと全会一致で決まりました。それに必要なのは、まず糯米(うるち米)。コロンビアのでは輸入米しかなく、勿論それでは意味がない。FEDEARROZの種子バンクを利用して似ている品種を特定し、試作する予定です。千里の道も一歩から。長い目で形にしていきます。