農業流通チェーンにおけるトラック運転手の大規模道路封鎖の影響は?

(空港近くの道路封鎖。車を降りて歩いて向かう人が目立ちます)

この国に居住し、ビジネスする上でげんなりするイベント。約90日に一度必ず実施される何らかの抗議活動デモ!! 

これはもれなく道路封鎖がついてくるので、主要道路の先に勤務先や学校がある場合生活への影響は必至。無論もっと頻繁な国もあるんだろうけど、「8月中にやってほしかった…」、「出張あるのに空港行けない…」と始まる前からストレスを感じます。ただ、大抵のコロンビア人にとっては必要悪であり慣れっことなっているのか、わりと「自分の意見を表明することは大切で、デモをするなという権利は誰にもない」と淡々と受け入れていることが印象的。コロンビアに住んで10年以上になりますが、「生活に支障が出るのが迷惑」と思う自分が幼稚だと感じるのはこんな時です。

そのお決まりの抗議活動が先週9/4~9/7にかけて、今回はトラック運転手によって実施されました。彼らが直面している経済的な負担や業界の課題に対応するためで、具体的には以下の理由です。

  1. 燃料費の高騰
    当地は2022年10月以来、15回以上ガソリン価格の値上げを繰り返しており、現在1ガロン(約3.7リットル)あたりボゴタ:1万5.573ペソ(約531円)、メデジン:15.506ドル(約529円)。満タンにすると5,000~6,000円が飛んでいきます。燃料価格が上昇すると、運送業者や個人事業主の運転手は直接的な負担を強いられるだけでなく、多くの場合彼らは下請けで契約によって運賃が固定されているため、燃料価格の変動に柔軟に対応できず結果として収益が減少します。燃料補助金があれば、こうしたコスト増加を緩和できるとの主張の理由です。
  2. 運賃の低迷
    コロンビアではいまだ陸路輸送が中心で、競争が激しい運送業界では運賃が抑えられる傾向があります。特に小規模の運送業者や個人事業主のトラック運転手は、大手企業との競争にさらされ、運賃が低水準に据え置かれることが多いです。運賃が燃料費やその他の経費に見合わない場合、補助金によって生計を維持するための支援が必要になります。

そして政府の公式発表(2024年9月8日付)によると、抗議活動初日である9月4日(水)の時点で卸売市場における食糧備蓄量が8月28日に比べ49.7%減少したことがわかりました。


最も影響を受けた供給センターは、北東部ブカラマンガのCentroabastos、首都ボゴタのPlaza Samper Mendoza, ボゴタ近郊トゥンハのComplejo de Servicios del Sur、南西部カリのCavasa、北西部バジェドゥパールのMercabastosとなります。ボゴタではトラック入庫が55%減少し、ブカラマンガでは76.8%減少しました。


いう間でもなく、それにより食品価格の大幅な上昇が確認されています。例えば、ネイバ県のレタスは280%上昇し、キロ当たり3,040ペソ(約103円)で売られ、カリでのレタスは258%上昇し、キロ当たり3,077ペソ(約105円)となりました。一方、中西部アルメニアではトマトの価格が93%上昇し、キロ当たり3,939ペソ(約134円)。その他玉ねぎ、インゲン豆、豆類なども道路封鎖による値上がりを記録しています。


単純な①輸送の遅延・停止(今回の道路封鎖により、農場から市場や都市部への野菜の輸送が遅延、または停止した。供給が減少することで市場における野菜の供給不足が発生し、価格が上昇)による理由だけでなく、②野菜の劣化(特に生鮮食品である野菜は保存期間が短いため輸送の遅れが品質に悪影響を及ぼす。質の良い野菜が減少することで、需要が供給を上回り、価格がさらに高騰した)や③物流コストの増加(封鎖に参加していない一部の物流業者や直接販売業者が迂回ルートの利用や別の輸送手段の手配が必要になる場合、輸送コストが上昇する。このコストは最終的に野菜の価格に転嫁される)ことなどが指摘されます。

加えて果物も大幅な値上がりを見せました。マニサレスでは、パッションフルーツの価格が69%上昇し、キロ当たり4500ペソ(154円)で販売。他にもツリートマトの価格が29%上昇し、キロ当たり3000ペソ(102円)に達しました。
コロンビア農業省も手をこまねいているわけではなく、内務省と鉱業エネルギー省に協力を仰ぎ、統合司令部を設置。封鎖による食品流通への悪影響を軽減し、農家と消費者への損害を最小限に抑えるべく、供給ルートの確保に成功したと述べています(2024年9月8日日曜日付当地経済紙アグロネゴシオ紙)。


9/9以降は、一旦道路封鎖は緩和されると発表されていますがまだ緊張は続きそう。


農作物や生鮮食品は迅速な輸送が求められるため、道路封鎖により品質が劣化したり、廃棄せざるを得ない状況が生まれていることがよっぽど胸が痛い。

一体何をどう解決したら、供給チェーンに影響を及ぼさずに抗議活動ができるのか? 「正しいデモのやり方」なんて指南本がほしいなぁ、そもそも市民生活に悪影響を与えずに国と交渉する術がもっとないのか? ロビー活動がなぜ効果がないのか? とやきもきしながら推移を見守っています。

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