米国トランプ大統領就任による保護主義政策によって、コロンビアの畜産業はどう変化するか?

大統領に返り咲いたドナルド・トランプ氏(任期2025年~2029年)。それに伴い、当地の畜産業では期待と懸念の声が大きくなっています。個人的には保護貿易を中心とするトランプ氏の方針を楽観視するコロンビア政府(可能性以外何物でもないと明言したアグロ経済紙アグロネゴシオ2025年1月23日木曜日付)は、当地の食肉の売り先の有望株は中国であり、米国向けはたいした影響はないというスタンスであるものの、では酪農部門はどうなのか? 親米路線は変わらないのか? 政府発表資料等をもとにいくつかポイントをまとめました。


①米国とのFTA変更可能性
2011年に発効した米国・コロンビアのFTA修正の可能性はほぼない。第一次トランプ政権のときに手つかずであり、コロンビアが米国と再交渉を望むのは悪手ともいえる。
②畜産部門が輸出を制限される可能性
現時点で当地は米国向けに牛肉を輸出していないものの、コロンビア産牛肉を米国市場に参入するための衛生要件は満たしている状況。トランプ政権によって、一気に交渉が進む可能性もある。現在米国向け生乳と乳製品の輸入規模は数量ベースで約2,000トン(2023年)で非常に少ないものの、これも増加する可能性はある。

③トランプ政権下で実施される可能性のある保護主義政策によって、コロンビアの畜産物に特別なリスクはあるか?
食肉に関しては輸出していないので、関税マターはない。しかし、コロンビア向けに生乳を輸出している米国輸出業者に対して何らかの措置が取られた場合、米国が報復としてコロンビア産食肉の輸入解禁交渉を中断する可能性はある(しかし、公正な貿易の枠組みからすれば、コロンビアが米国産生乳やその加工品のお得意様であることは変わりなく、畜産をカードに交渉の場をぐらつかせることは考えにくい)。
④トランプ大統領は、コロンビア畜産に商機をもたらすか?
衛生要件を満たしている上に、米国にとっても食肉が安く手に入ることはメリットである。また当地にとっても、地理的な近さとアメリカ市場の人口や胃袋、ニーズはビジネスチャンスとなる。米国市場への食肉参入が具体的に認められるかどうかは、外交および貿易関係における今後4年間の努力による。


トランプ政権下での政策変化は、コロンビアの畜産にとって両刃の剣となり得るかもしれない。アメリカが輸入関税を増加させた場合コロンビア産製品の価格競争力が下がるリスクがある一方、アメリカ国内での畜産需要が高まり生産コストが上昇した場合、コロンビア産の製品が代替として選ばれる可能性もあります。
コロンビア国内の規制対応能力を強化することが鍵となりそうです。

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