日本万博が生んだ実利──コロンビア、商談額3,460万ドルの意味と今後の展望

2025年秋に終幕した大阪・関西万博(結局私は行けず・・・)。

コロンビアは「展示の場」を「取引創出の場」へと明確に位置づけた参加国の一つとなりました。政府系輸出・投資促進機関であるProColombiaが主導した同国パビリオンには、会期を通じて延べ約130万人が来場し、公式発表では約3,460万米ドル(約50億円弱)の商談創出となりました。これは単なる関心表明ではなく、353件に及ぶビジネスミーティング、61社の海外バイヤー、44社のコロンビア企業が関与した、具体的な取引可能性を積み上げた結果といえます。

商談の中心となったのは農業・食品分野で、全体の約9割。特にコーヒーは即時性の高い商談が多く、全体の約85%を占める主力品目となりました。加えて、ハス・アボカドでは単独で約1,100万ドル規模の取引見込みが報告されており、日本を含むアジア市場での需要拡大が明確になっています。カカオ、ココナッツオイル、加工食品といった中付加価値品も一定の引き合いを得ており、一次産品依存からの脱却を意識したポートフォリオ形成が進んでいる点も注目されます。

地域別に見ると、バジェ・デル・カウカ県、アンティオキア県、クンディナマルカ県など、既に輸出基盤を持つ地域が成果を牽引しました。一方で、これまで国際市場との接点が限定的だった地域の中小事業者も商談に参加しており、万博を通じた裾野拡大効果も確認されています。需要先は中国・韓国を中心とした東アジアが約9割を占め、日本、オーストラリア、東南アジア諸国からの引き合いも複数発生しました。コロンビア農産物に対する「安定供給」「トレーサビリティ」「サステナビリティ」への評価が、価格競争力だけに依らない商談につながったと分析されています。

今回の万博参加は、短期的な商談額に加え、中長期の投資誘発効果も持ちます。公式には20件超の投資意向が確認されており、分野はアグロインダストリー、再生可能エネルギー、物流、ITなど多岐にわたります。特に農業分野では、加工・保管・輸送インフラへの投資が検討段階に入りつつあり、輸出量の拡大だけでなく単価向上につながる構造変化が期待されています。観光分野でも約1,000万ドル規模の商談見込みが示されており、農業と観光を組み合わせた地域ブランディングの可能性も広がっています。

今後の見通しとして、万博で形成された商談案件のうち、一定割合が2026~2027年にかけて実契約に移行すると見られています。複数の市場分析では、アジア向けを中心としたコロンビア農業輸出は、今後2~3年で年率5~8%程度の成長が見込まれています。仮にこの成長率が維持されれば、今回の万博由来の商談は、数年内に累計で5,000万~7,000万ドル規模の実取引に発展する可能性があります。一方で、価格変動、物流コスト、非関税障壁といったリスクも存在するため、中長期契約の確保や現地パートナーとの連携強化が不可欠となります。

大阪・関西万博におけるコロンビアの成果は、国家ブランド発信と実利創出を同時に達成した事例といえます。約3,460万ドルという数字はゴールではなく、アジア市場における持続的な農業ビジネス拡大の起点にすぎません。今後、この成果をどこまで実契約と長期取引につなげられるかが、コロンビア農業政策と企業戦略の成否を左右することになります。

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