コーヒーの最先端に「コロンビアあり」となる次の収獲方法はあるのか?

全世界の総生産量(2022年、全国コーヒー生産者連盟FNC統計)1億6,038万トンを突破したコーヒー。

世界三大生産国(ブラジル、インドネシア、コロンビア)の一つに位置する当地にとって、2022年は歴史的な一年でした。輸出は金額ベースで前年比36.7%増の37億4,800万ペソ。1~9月間の平均価格はニューヨーク証券取引先のコーヒー先物価格も前年比約49%増を突破し、2023年3月現在も1kgあたり4.9USDの価格帯で推移。農業GDPの約17%を占める品種であり(2022, FNC公式発表)、約80万7,000人の雇用を創出。年間1,200万袋(1袋:60kg)を生産しています。生産拡大傾向を受けて、FNCはラニーニャの多雨影響も何のその、さらなる供給拡大を掲げています(余剰分はFNCが負担して買取)。


先月、弊社もバジェデルカウカ県トルヒージョにあるいくつかのコーヒー農園を、FNCと訪問する機会をいただきました。当地のメイン道路であるサトウキビ用地畑が途切れたかと思うと、舗装されていない山道を延々と上がり、獣道をジープで開拓するような道程。この先にコーヒー農園があるのかと気が遠くなった先の、やっと到着した先の笑顔・・・。


まずは豆をみましょう。コロンビアで収穫される豆のほとんどはアラビカ種で、その中でも7つの銘柄があります。
①ティピカ:円錐形の豆の形状が特徴
②ブルボン:二次枝梗が多い
③カトゥーラ:ブルボンと同上
④マラゴシッペ:ティピカの変異体
⑤タビ:ティピカ・ブルボン・ティモールのハイブリット種。グアンビアノ(コロンビアの部族)の言語で“良い”という意味をもつ。
⑥コロンビア:カトゥーラ・ティモールの交配種。
⑦カスティージョ:さび病、炭素病(CBD)に強い。
今はほとんど多くの農園でカスティージョ種の銘柄を生産・日本や先進国向けに輸出しており、今回訪れた農園もカスティージョがメインでした。ぷっくりとした実がとても立派! 


加えてプランテーションではなく、先住民から代々伝わる森林栽培が特徴。そのメリットとして、
①背の高いスパイスツリーが直射日光からコーヒーノキを守る。
②バナナなどの葉が堆肥になる。
③単一栽培ではなく、複数の収入源となりやすい。
つまり、簡単に機械化できる土壌ではないということ。
こちらではエチオピア等のアフリカ諸国で主流である乾燥ではなく。ウォッシュド(水洗式)。水管理も重要となるほか、生産コストも無視できません。


栽培プロセスは、①播種→②発芽床(消毒済)→③チャポラ(双葉)→④アルアシゴ(育苗、植え替え前)→⑤移植→⑥肥料(有機もしくは科学肥料)→⑦手摘みで収獲という長い道のり。播種から収獲までは約3年8か月かかります。
そこから、加工プロセスとして①果肉除去→②発酵→③水洗い→④乾燥→⑤内果皮のついたパーチメントコーヒー(通常この状態で出荷)→⑥脱穀→⑦スクリーニング(大きい粒子ほど良い)→⑧ハンドピック(手作業・目視)→⑨焙煎で、ようやく至高の一杯を味わえるということ。こんなに生産者と消費者が遠い作物もあるのかと驚きました。


物流インフラは、FNC支援のおかげでだいぶ舗装されたとはいうものの大型機械を導入できるような土壌ではなく、大半は手作業。今回パルパー(果肉除去機)を新規導入した様子も拝見しましたが、特に大変なのは手摘みの収獲。体験したところ、腰にバケツをくくりつけてひたすら無心に赤い実をちぎる。目視しながら選別できるとメリットがあるというものの、30分程度頑張っても200g程度。加工済みの1kgのパーチメントコーヒーが約230円ですから、時給に換算したくない。


農園側も理解していて、黒い網を木の根元に敷き、手で落しながら撒くように収獲していく方法も導入されてました。
高齢化の進む農家さんと話しながら、一体どのように収獲すべきなのかを思案していました。
小型でピッキングできる機械だと効率化もはかれますが、あくまで「手摘み」というスペシャリティにこだわるのも捨てきれない。目視だと品質は確保できるため、銘柄の品質のためには現状維持が妥当とも思う・・・と。


果たしてそうなんでしょうか。確かに傾斜地ではこの選択肢しかないのかもしれない。でも、ピッカー(摘み手)に頼らずとも新しい小型機械をつくることができれば、人手は1/3に減るかもしれない。


今回、バジェデルカウカのオリジナルスペシャリティコーヒーも日本で愛飲されています。

人が落ち着く瞬間にある手元のコーヒーは、何十人もの手によって、果てしない工程を経て日本に渡っています。このまま市場競争に勝てるコーヒーを生産し続けたい。そのためには土壌細菌から守られ、枝葉にダメージを与えず、未成熟果実のコンタミも起きにくい・・・。

そんな収獲方法を得ることが、次の持続可能なコーヒー作りであるはず。

弊社のビジョンに、新しいチャポラ(双葉)が顔を出したようです。

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