2026年コロンビア大統領選と経済の転換点:統計が示す「分配」と「自由」の相克

2026年5月の投開票に向けたコロンビアの政治経済情勢は、現職ペトロ大統領の継承者であるイバン・セペダと、急進的な右派ポピュリストであるアベラルド・デ・ラ・エスプリエージャの一騎打ちの様相を呈しています。ビジネスの視点から見ればこれは単なる政権交代の是非ではなく、記録的な賃上げに伴うインフレ懸念や財政規律の崩壊リスクをどう制御するかという、具体的な生存戦略の選択になりそうです。
結論
2026年のコロンビア経済は、前年比23%増という異常な最低賃金引き上げにより、インフレ目標(3.0%)の達成が絶望的な状況にあります。イバン・セペダが勝利すれば、脱炭素と分配重視の「ペトロ路線」が固定化され、外資の慎重姿勢は継続。対照的に、デ・ラ・エスプリエージャが勝利すれば、ミレイ(アルゼンチン)流の過激な市場開放が行われますが、同時に社会不安と二極化が加速するリスクをはらんでいるでしょう。
主要指標と「ポピュリズム」の代償
2026年のビジネス環境を規定するのは、経済合理性を度外視した統計数字の動きです。
最低賃金の暴騰: ペトロ政権は2026年度の法定最低賃金を前年比約23%増(1,750,905ペソ)に設定しました。これは予測インフレ率(5.2%)や生産性成長率(1.5%)を大幅に乖離しており、実質的な労働コストは法定時間の短縮と合わせると前年差で30%以上増加しています。
インフレと金利: 中央銀行(BanRep)はインフレ目標3.0%を掲げていますが、賃上げに伴うコストプッシュにより、2026年末のCPIは4.2%〜5.1%で高止まりするとの予測が強まっています。これにより、期待されていた利下げサイクルは停滞し、借入コストの高止まりが企業の設備投資を抑制しています。
財政の「穴」: 2026年度予算(約1,337億ドル)において、議会が約42億ドルの税制改正(増税案)を否決。政府は「経済非常事態宣言」による強行突破を示唆しており、法的安定性の欠如が外資(FDI)の流入を妨げる最大の要因となっています。
候補者別:ビジネスへの影響とリスク
イバン・セペダ:国家主導の「平和と再分配」
現在、世論調査(Invamer)で31.9%の支持を集め首位に立つセペダ氏は、ペトロ路線の忠実な後継者です。
リスク: 2025年に前年比16.9%減少した燃料・鉱業輸出のさらなる冷え込みです。新規石油探査の停止を継続するため、2026年の経常収支赤字はGDP比3.5%まで拡大すると予測されます。ビジネス文書においては「環境正義」が優先され、伝統的産業のコスパは著しく悪化します。
アベラルド・デ・ラ・エスプリエージャ:右派ポピュリズムの「リセット」
世論調査(AtlasIntel)で急浮上し、決選投票予測では44.2%対34.9%でセペダ氏を圧倒する数字も出ています。
リスク: 「政府を破壊する」とする過激な公務員削減や規制撤廃は、短期的には市場に歓迎されますが、左派支持層による大規模デモを誘発し、物流網の遮断(ブロック)を招く恐れがあります。治安(Insecurity)が国民の最大の懸念(31.3%)である中、彼の「鉄拳制裁」公約がタイパ重視の経営にどう作用するかが焦点です。
コロンビアの2026年選挙は、対米関係の変数も無視できません。トランプ政権(2025年発足)との緊張が続く中、セペダ氏がBRICS加盟を推進すれば、米コロンビア自由貿易協定(FTA)の再交渉など、輸出業者にとって致命的なルール変更が起こるリスクがあります。

