食品インフレの再燃:コロンビア経済の「構造的地殻変動」と国際ビジネスの混迷

独立記念日のスーパーは国旗模様(7月20日)

当地経済紙Portafolio(2026年3月10日付)によると、2026年第1四半期、コロンビア経済は一つの大きな矛盾に直面しています。全体の消費者物価指数(CPI)が緩やかな鈍化を見せる一方で、国民の生活の根幹である「食」のカテゴリーだけが、前年比5.84%という異常な加速を見せているのです。この現象は、単なる一時的な天候不順による供給不足ではなく、現政権が進める急進的な労働政策(もうすぐ大統領選ですが)と、世界的なサプライチェーンの再編が衝突して生じた摩擦熱といえます。


今回の食品価格高騰の最大のトリガーは、2026年1月に断行された最低賃金23.7%引き上げです。労働者の購買力を維持するという人道的な大義名分とは裏腹に、現実は残酷なもの。コロンビアの農業は依然として労働集約的であり、収穫から選別、輸送に至るまでが縦割りで多くの人手を要します。人件費が2割以上跳ね上がれば、そのコストは瞬時にプランテインやジャガイモ、牛乳といった基礎食品の価格に転嫁される。本当に物価が上がりました。

さらに、2026年後半に予定されている週42時間労働制への完全移行が、追い打ちをかけます。実質的な時間単価の上昇は、農業生産性を向上させる猶予を与えないまま、生産コストをさらに3割近く押し上げる計算になります。これは、コロンビア国内で「安価な労働力」を前提としていたビジネスモデルが完全に終焉を迎えたことを意味します。
この国内インフレは第一に、「コスト・プッシュ型」の輸出競争力低下です。コロンビア産のアボカドやコーヒーは、これまで品質と価格のバランスで世界市場を席巻してきました。しかし、国内の食品インフレに端を発するコスト増は、国際価格への転嫁を余儀なくさせます。日本のような価格に敏感な市場では、10%の価格上昇がシェアの劇的な喪失に直結しかねません。

第二に、「ペソ高・コスト高」による利益の蒸発です。現在、コロンビア中央銀行はインフレ抑制のために政策金利を10.25%という高水準に維持しており、これが海外からの投機資金を呼び込み、ペソ高(1ドル=3,500ペソ台)を招いています。輸出企業にとっては、「現地コストはインフレで増大する」一方で、「外貨売上のペソ換算額はペソ高で減少する」という、出口のない挟み撃ち状態にあります。

コロンビアの食と農は、今や「資源の宝庫」から「コストの激戦区」へと変貌。食料品価格がインフレ率全体を上回る状態が続けば、低所得層の不満は蓄積し、物流を止めるストライキやデモのリスクが再燃します。また、企業の借入コスト増大と収益悪化が重なれば、中小サプライヤーの連鎖倒産も現実味を帯びてくるでしょう。実際、私のまわりにも最低賃金の値上がりに企業が悲鳴をあげ、従業員を次々にクビにしているケースが見られます。だって日本円で9万だよ? 日本に行っても、下手したら地方でも暮らせる額だよね? この国は今後どこに向かうのか。一時的な波ではなくて、今後この状態がスタンダードになっていくんだろうと思います。

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