コロンビア 大統領選決戦投票は6月19日へ。シルバーデモクラシーが中心で若者の投票の行方が鍵に

数週間前からだろうか。自宅のベランダから数百メートル先の大通りにスクリーンが設置され、大統領候補であり前ボゴタ視聴のグスタボ・ペトロのプロパガンダが24時間流れている。去る日曜日の選挙当日にクレーン車が配置されたので、ついに撤去されるかと思いきや動画の内容がより大衆向けにアップデートされたものとなった。決戦投票に向けて準備していたことよりも、「決戦投票に進む(=一度目の選挙では過半数を獲得できない)」ことを見越していたことに正直驚いた。それくらい、「大統領は左派ペトロ氏で決まり」という雰囲気があった。

グスタボ・ペトロは40.3%を獲得、次点のロドルホ・エルナンデス前ブカラマンガ市長の28.1%となり大きく水をあけられている。投票率は54.9%。当地では投票証明書の受領で有権者は雇用先に半日の有給休暇取得が認められているので、この投票率の低さも意外である。若者の選挙離れが問題であるという指摘があったが、生活者として今回の大統領選挙が比較的おとなしかったことが大きいように感じる。討論番組もさほど盛り上がらず、特にペトロ氏は殺害予告もあったためか地方遊説もほとんどなし。私の居住するカリ市では、直接候補者演説を聞く機会もなかったのである。 候補者のマニフェストをみよう。前ボゴタ市長で一時ゲリラにも所属しており、シパキラの青年議員から汚職告発で頭角をあらわしたペトロ氏(62才)は

①新規雇用創出
②安定的石油の開発・供給
③アグロインダストリー開発
④年金改革(年金非加入者に月額50万ペソ、約1,716円支給)
⑤大衆に沿った経済開発

を挙げている。エルナンデス候補は前ブカラマンガ市長であり77才の大学教授であり、マニフェストには

①年金改革(これまで支払っていたかの条件等を加味せず一律支給
②貧困層に月額100万ペソ(約3万4,300円)支給
③生活必需品にたいして付加価値税10%引き下げ
④汚職ゼロ
⑤小さな政府の実現

を掲げている。

候補者が老獪な年齢だからだろうか、高齢者向けの政策が目立つ。コロンビアでは現在、約26年以上雇用され年金の積み立て(労働者の負担額25%)をした男性62才、女性57才から年金受給資格が得られ、支給額は給与の約65%-80%の間である。しかし年金問題で揺れる当地では、そもそも受給資格のない高齢者が多くそこにメスを入れて投票獲得へと動いているようだ。

シルバーデモクラシーはわかる。でもこれは、大統領でないとできないことか。県議会議員レベルでもこの政策は変えられるのではないか。コロンビアは決して発展途上国ではない。今年度第一四半期GDP8.5%を達成し、人口5,000万人を突破。一人あたりの名目GDPは5,340ドル(2020, 世銀)にとどまるものの、南アフリカやペルーにも匹敵する経済力をもってきた。

許されるならば、対内政策よりもっと、対外政策の声をききたいと思う。コロンビアがアメリカとどう対峙し、10年経ったFTAにテコ入れしていくのか。アンデス共同体、メルコスールで影響力を見せ付けるのか。石油外交、コーヒー外交で手腕を発揮するのか。コンサルタントとして、開かれた経済政策を維持してほしいと願う一方、あまりにシルバーデモクラシーに終始する今回の大統領選挙は残念な限りである(ただし、アメリカのバイデン大統領にはじまり、いうまでもなく世界的におじいちゃん政治家が増えているのは間違いないのだが) そして、この国で育児するひとりの母親としては、子育てのモチベーションとなる政策があったらいい。高齢者へ予算とりつけよりも、教育格差の是正や給食費の補助、医療費無料に進んでほしい。 ここまで書いてふと思う。こんな子育て施策こぞ、大統領選挙ではなく市議会・県議会議員に望むレベルではないのか。 この国の中央集権が浮彫りとなる今回の大統領選挙。シルバーデモクラシーの中、若者世代の投票は職業政治家のペトロ氏か、老獪なおじいちゃんのエルハンデス氏なのか。その行方を見守りたい。

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