左派→右派 政権交代でコロンビア農政はどう変わるか?

2026年8月、当地でエスプリエリャ新大統領が就任し、インダレシオ・ダンゴン氏が農務大臣に着任しました。この政権交代により、コロンビアの食と農を取り巻く政策は、ペトロ前政権の「土地の再分配・社会支援中心」から、「生産性向上・金融支援・民間のビジネス重視」へと大きく舵を切ったことになります。

前政権は所得格差を解消するため、国家が土地を買い上げて小規模農家に分け与える富の再分配方針を実行していましたが、手続きの停滞や収益の低下という課題もありました。これに対し新政権は、成長と効率性を最優先にアグリビジネスを進める意向です。

これまでの、政府が予算を使って農地を直接買い上げる方針は実質的に凍結され、土地の買い上げ予算も削減されました。代わりに新政権は、小規模農家がすでに使っている農地の「所有権(権利)」を明確にすることに力を入れています。土地の境界線や所有権を法律上しっかりと確定させる(驚くことに、それがうやむやになっていることがとても多いコロンビア)ことで、農家はその土地を資産として活用し、銀行から融資を受ける際の担保になります。私は、この転換は非常に現実的で筋が通っていると考えるほう。政府が土地を配るのを待つよりも、今耕している土地の権利を確定させて資金調達の道を開くほうが、タイパの面でも即効性があり、農家の自立を促すうえでも合理的だからです。

これと連動して進められているのが、約250万人にのぼる小規模農家を金融システムに取り込む金融インクルージョンの推進。農家が銀行口座を持ち、低金利の融資や政府の信用保証を利用しやすくすることで、政府の補助金に頼るのではなく自らのビジネスとして機材や資材に投資できる環境を整えています(もちろん、今までもあったのでさほど目新しくない)。さらに、気候変動やエルニーニョ現象の干ばつ被害に対応するため、新政権は「農業は水から始まる」という方針のもと、全国での灌漑施設づくりを最優先事業に位置づけました。水資源の確保とスマート農業技術を組み合わせることで、単位面積あたりの収量を増やし、輸出競争力を高める狙いがあります。

輸出戦略においても、新政権はビジネスライクの姿勢を崩していません。コーヒーやバナナといった伝統的な作物に加え、ハスアボカドやパッションフルーツ類(グルパ、グラナディジャ)などの非伝統的農産物の輸出を伸ばすため、貿易手続きの簡素化や検疫対応の強化が始まりました。また、かつて紛争地域で行われていた不法作物(主にコカ)からカカオ、コメなどへの作物転換事業についても、単なる政府の補助金支給ではなく、民間の大手アグリビジネスや大手食品企業(ペプシコなど)と農家を直接つなぐ市場直結型の仕組みへと移行しています。農家が収穫物を買い取ってくれる市場と直接つながることで、実質的な経済的自立を目指すアプローチです。私が見るに、行政の助成金に依存する仕組みは持続性が低く(無料だとそもそもモチベーションが低い。でもここの人達はタダでやってもらうことに慣れすぎている)、買取先となる企業と直接連携を組むモデルが、現場の経済的自立を果たすための最も手堅い現実解だと評価します。

一方で、都市部で盛り上がりを見せていた地産地消や伝統食材を活用する食育、あるいは環境配慮型農業の取り組みには優先度が下がるという懸念もあります。でも、これが直ちに後退を意味するわけではなく、新政権下では環境配慮は理念ではなく、「生産コスト削減」や「海外市場での認証取得」という実利的な戦略として生まれ変わると思います。ビジネス上の強い動機と結びつくことで、かえってスマート農業はじめ環境配慮型農業の実用化が現場で進む可能性が高いかもしれません。

2026年の政変は、いわゆる左派の「社会的な公正と分け合い」時代から、「生産性の向上・融資の活用・インフラ主導の成長」へと舵を切ったことで、コロンビアの農業は日本はじめ民間の投資家やビジネス層にとって、より参入しやすい環境になるかもしれません。豊かな生物多様性と多様な気候帯という潜在能力を、インフラとアグリの力でどこまで経済的な価値に変えられるか。気候変動や国際市況の変動といったリスクに対応しながら、新政権が進める市場主導型のモデルが農家の収入増加と国の食料自給率の向上を両立できるか、新しい試練と可能性の段階に入っています。

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